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第五章 惑乱の異形

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11/14~11/28

前章→第四章 王都薙刀術元師範

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異形のヴァルタモーゼ

・・・何ですか、この—禍々しい生き物は・・・

『私たちの名は』『ヴァルタモーゼ』『・・・』『・・・』

王都にまだ魔王軍がいるなんて・・・

やはり簡単に引き下がったわけではないようですね。

危ないですから○○○(プレイヤーの名前が入る)は下がっていてください。



引退したとは言え、私は痩せても枯れても元師範。

ヴァルタモーゼとやら、かかってきなさい。この明鏡清流刀の錆にしてくれましょう。

『お待ちください』『待て!』『グルルル・・・』『・・・』

何ですか!?同時に複数の声が聞こえてきますが・・・

『私たちは多くのものたちを取り込んでいるのです』『我々は一体化しているのだ』『ウグググ』『・・・』



ば、化物め・・・

『なぜ薙刀を構えるのです?』『なぜ我々を攻撃しようとするのだ』『・・・』『・・・』

なぜって・・・魔王軍だからです。あなたたち魔王軍が私たちに害をなすからです。

『本当にそうでしょうか?』『俺が何をしたと言うのだ』『嘘ツキメ』『・・・』

当然ではないですか。現に侵略をしてきているではないですか。



『あなたたちが壁を作るから登るのです』『門を閉ざすからこじ開けるのだ』『拒ムカラ襲ウノダ』『・・・』

・・・あなたたちから私たちを襲うことはないのですか・・・?

『なぜ襲う必要があるのです?』『当然だ』『グゥゥゥ・・・』『・・・』

○○○(プレイヤーの名前が入る)はどう思いますか?

・・・まだ分からないですよね。でも確かに見た目で判断してしまっていたのかもしれません。



『いいのですよ』『いつも疑われてばかりだ』『慣レテイル』『・・・』

では何が目的なのですか?

『あなたがたに呼ばれたのです』『救済だ』『心ノ叫ビ』『・・・』

救済?私たちが呼んだ・・・?何の話ですか?

『やはり王都は苦しみに満ちていますね』『我々が必要とされる場所』『ミナ病ンデイル』『・・・』



『あぁ、あそこに肩を落として歩いているヒトが』『救済』『ヴヴヴヴヴ』『・・・』

・・・何をするつもりです?

『ご覧の通り、救済ですよ』『我々の仲間』『ギガガギコ』『・・・』

あぁぁ!な、何をしているのです!?人が吸い込まれていきます!

『取り込み完了』『これでもう苦しむこともない』『ググッググ』『・・・』『うわぁぁぁ・・・』



騙されました!取り込んだ人を返しなさい!

『落ち着きなさい』『取り込まれた者の声を聞くが良い』『・・・』『・・・』

『何だ、この感覚は・・・まるで大きな何かに包まれているような安らぎ・・・』

『あぁ・・・こんなに心が穏やかなのは初めてだ』

何と言おうと相手の意志も確認せずに勝手に取り込むなど許されません。



『あなたは』『元の体に』『戻リタイカ』『・・・?』 

『い、嫌です!元の世界は苦しくて汚らわしくて・・・』

何を言っているのです?あなたの家族や友達もあなたがいなくなれば心配するでしょう?

『元の世界の私には友達なんかいない!』

・・・気をつけてください、○○○(プレイヤーの名前が入る)。本当に取り込まれた人が発している言葉とは限りませんよ。



取り込まれた人の体はどうなったのですか?

『まだそんなことを言っているのですか?』『愚かな・・・』『ゼゼ前時代的ダダダダ』『・・・』

『分かれているから競うのです』『個体だから争うのだ』『自我ガ自ラヲ苦シメル』『・・・』

分かれているから友達や愛する人ができるのではないですか?

『友達は不要です』『友達という時点で区別している』『区別ハ差別ヲ生ム』『・・・』



これ以上は議論しても無駄のようですね。いざ!

『良いのですか?』『我々を倒しても取り込まれた肉体は元には戻らぬ』『消滅スルノミ』『・・・』

!?それでは今取り込まれた人も救えないです。どうすればよいのですようか・・・

『私たちの主を倒さない限り元には戻りません』『おい!なぜ言うのだ!?』『創造主』『・・・』

『良いではないですか。あのお方が敗れるはずもなし』『それもそうだ』『アハハハ』『・・・』



あなたたちの主というのは、まさか魔王・・・?

『まさか』『恐れ多い』『完全無欠』『・・・』

『主は前回のあなたたちが言う゛侵略”の失敗から学ばれたのです』『今回は我々も一緒だ』『ジギジギギ』『・・・』

まさか前回指揮していたあの冷酷無比な男が来ているのですか!?

『主はとても温情に溢れたお方です』『主のためならどんな犠牲も厭わぬ』『チチ忠義ヲ尽クス』『・・・』



あぁ、これは天が私に仇討の機会を与えてくださったのだ・・・

すぐにでも探しに行きたいところですが・・・

『あそこに疲れて座っているヒトがいます』『可哀想に。取り込んでやろう』『ギャギャガアガ』『・・・』

『あぁ、あそこに我々を見て怯えているヒトがいます』『可哀想に。取り込んでやろう』『ドドギギギ』『・・・』

や、やめなさい!その人たちは取り込まれることを望んでいません!



くぅ、○○○(プレイヤーの名前が入る)!これ以上犠牲が増える前に倒してしまったほうが良いのでしょうか!?

・・・え?中にロゼがいるかもしれないですって?

ロゼ!中にロゼはいませんか!?

『誰ですか?それは』『我々にはもはや個体名は存在せぬ』『無駄』『・・・』

あなたの友達が、○○○(プレイヤーの名前が入る)が探しに来ています!ロゼ!!



『仮にいたとしてももはや反応しませんよ』『個々の意識はやがて同化される』『無駄』『・・・ィ』

!?今、微かに別の声が聞こえたような・・・

『ぐぅ!?』『意識が!』!『混濁スル!』!『・・・リ・・・』

あぁ!もしかしてロゼが反応しているのではないですか!?

ロゼ!○○○(プレイヤーの名前が入る)も大きな声で呼んであげてください!ロゼ!!



『ぐあぁぁ!』『意識が!』『分裂スル!』!『エ・・リ・・ィ・・!』

エリィ!?エリィって言いましたか!?

○○○(プレイヤーの名前が入る)はエリィを知っていますか?・・・ロゼの幼馴染?

もしかするとそのエリィが今回の鍵を握っているのかもしれません。

『あががが』『グググブブブ』『ギギア』『・・・』



危ない、○○○(プレイヤーの名前が入る)!暴走を始めています!

私はここでこの異形を食い止めますので、あなたはエリィの元に急いでください!

私はもはや喪失には耐えられません。もしこの場で○○○(プレイヤーの名前が入る)を喪ってしまえば私はどうやって生きていけばよいのか・・・

早く!・・・私を心配してくれているのですか?ありがとう・・・

これを・・・私の大切なものをあなたに預けておきます。後で必ず受け取りに参ります!



さぁ、早くエリィの元に!ロゼを救うために!

『あああああああああ!!』『アアアアアアアアア!』『アアアアアアアアア!!』『・・・』

最後にあなたに会えて良かった・・・

【第六章へ続く】



はぐれヴァルタモーゼ

*#$%Ӵ~+

は、はわわわわ・・・

新弟子、こっちだ!こっちに炉是がいるぞ!

炉是!走り込みから戻らないと思ったら、こんなところでサボっていたのか!

(パクパクパク)



何だ!炉是。魚のマネか?なかなか上手だな。私が昔飼っていた出目金によく似ておる。

し、師範・・・あなたも・・・これ・・・

|?<+#L$

む!?この異形のものは・・・魔王軍か!?なぜ王都にいるのだ。

さてははぐれ魔王軍だな・・・ギルドに連絡せねば。



炉是!危ないから、こっちに来い!

い、今帰れば、走り込みはもうやらなくていいんですの・・・?

何を言っている。それは罰なのだからやらねばならぬ。王都まで後、往復二十回だ。

ひぃぃ、ま、前より増えてるんですの!それならロゼはもう師範の元には戻らないんですの!

師範の熱烈指導には耐えられないんですの!



「薙刀を教えてください」と頭を下げてお願いしてきたのはお前ではないか。

ロゼに薙刀は無理なんですの。ロゼは体育会系ではなく文化系なんですの!

根底から覆すようなことを言い始めたな・・・

そのように中途半端だと、今後何をやっても中途半端だぞ!

むぐぅ・・・あ、あなたに何が分かるんですの!



>_¥^{ゞ

あなたは何を言っているか分からないんですの!

@*%〒∀(TДT)

炉是!とにかくその異形のものから離れろ!私が斬る!

この子はまだ何も悪いことはしていないんですの!



「まだ」していないだけで「これから」悪さをするかもしれないから斬るのだ。

い、今のロゼには師範のほうが危ないんですの。

なんという・・・ぼさっとしてないでお前も何とか言ってやれ。

この子を攻撃しないでほしいんですの!あなたからも師範にお願いしてほしいんですの!

○○○(プレイヤーの名前が入る)!お前はどっちの味方なんだ。



そうなんですの!師範とロゼのどっちの味方なんですの!?

・・・何?どっちの味方でもないだと?

炉是に帰ってきてほしいだけだと?

ロゼには帰る場所はないんですの。この子も一緒なんですのよ。

ロゼにはこの子の気持ちがよくわかるんですの・・・



何度言えば分かるのだ、炉是!そいつは人に危害を加える魔王軍だ!

魔王軍だからってみんな人を襲うわけではないんですの。

ねえ?あなたはロゼを襲ったりしないですのよね?

$#∀△○!!

ほら!傷つけるわけないんですの、って言ってるじゃないですの!



嘘をつけ!今のは腹減った、何か食わせろ!と言ってる感じだったぞ!

違うんですの!

そうだ!

違うんですの!

」%♪ヨ(^O^)?



あなたは黙っててほしいんですの!

・・・

ほら、黙ったんですの!この子とだって意思疎通はできるんですのよ!

大丈夫なんですのよ~。誰にもあなたに危害なんて加えさせないんですのよ。

ロゼが薙刀を振り回す鬼師範から守ってあげるんですのよ。|ω゚)チラッ



だ、誰が鬼師範だ!もはや弟子でも許さんぞ!

きゃああ!魔王軍さん、助けてほしいんですの!

それは手招き・・・してるんですの?ロゼを匿ってくれるんですの?

やっぱり頼れるのは遠くの人より近くの魔王軍ですの!

よせ、炉是!



きゃああああ!!右手のぐるぐるに引き込まれるんですの!!

貴様、炉是を離せ!!炉是を・・・!?

あぁぁ・・・炉是が完全に吸い込まれてしまった・・・

ロロロロロロロロ・・・

貴様、許さん!許さんぞ!



離せ!炉是の仇を討つのだ!なぜお前が止めるのだ!

何?敵の様子がおかしいだと?

ゼゼゼゼゼゼゼ・・・

確かに・・・炉是を吸い込んでから苦しそうだ。

もしかすると炉是は吐き出されるのでは・・・



%yΩ〒+Z#$・・・デスノ。

で、ですの!って言ったぞ!ロゼが喋っているのか!?

・・・キ

キ?

キャー!アラーニャが何でこんなところにいるんですの!?



え?魔王軍をハロウィンの仮装だと間違えて吸い込まれたんですの?

アハハハ、アラーニャったらおっちょこちょいなんですのね!

え?エリーもいるんですの?キャー!エリー!4周年パーティー以来なんですの!

・・・カオスだ。

エリーったら・・・ハ・・ハ・・ハ・・



気をつけろ!何か様子が変だぞ!

ハクション!

敵の中から何か出てきたぞ!

ハックション!

うわ!今度は人が出てきたぞ!



キャー!くしゃみでエリィが飛び出してしまったんですの!!エリー!

【第六章へ続く】



迷夢のヴァルタモーゼ

・・・我ガ名は迷夢のヴァルタモーゼ

二人おるな・・・我ヲ召喚せしは貴様らのうちのいずれぞ?

ゆ、夢の中と言えど私は魔王軍を呼んだりはいたしません。

ホウ・・・ではもう一人の貴様が我ヲ呼び覚ましたるか?

フム・・・二人とも違うとは奇ッ怪な・・・



『フフ』『グフフ』『フェッフェ』『ヒヒヒヒヒ』

何でしょうか、同時に違う笑い声が聞こえてきますが・・・

まるで複数の人物が共存しているような・・・

貴様の言うとおりだ。我ハ飲み込んだ数多のヒトで構成されておる。

ば、化物め・・・



勘違いも甚だしい・・・我ガ無理やり飲み込んだことはない。

常にヒトの方から『飲み込んでください』と頼みに来るのだ。

戯言を・・・

我ガ内に入れば永遠の安らぎが手に入ると言うのに?

永遠の安らぎ・・・?あなたに取り込まれて死ぬだけではないですか。



貴様の言う「死」が肉体を指しているのなら、それは正しい。肉体は消え去るからな。

ただしそれは喜ばしいことではないのか?

病気や怪我で苦しむのはなぜだ?肉体を持つゆえではないか。

い、意識はどうなるのです?取り込まれた人たちの意識は!

取り込まれてしばらくは残っているが、やがてその残滓も我ト同化するのだ。



個々人の「意識」は我ガ「総意」へと生まれ変わる。

それのどこが安らぎなのです?くだらないですね。

無論、これだけなら貴様の言うように大した旨みはないが—

意識が取り込まれると、なりたい自分になれ、現実では諦めていた夢も簡単に叶う。

何を言い出すかと思いきや・・・それはただの夢や妄想ではありませんか。



夢よりも現実的に、妄想よりも実感できるが—この快感だけは体感せぬことには伝わらぬ。

ただ貴様が思う以上にそれを望んでいるヒトが多いのも事実。

ヒトが支配する現実より、魔王軍が支配する虚構の方がヒトは幸せになれるようだ。

まさか・・・ロゼもこの中に取り込まれてしまったのでは!?

ロゼ?そのような無意味な個体識別名など覚えておらぬ。



夢の中で取り込まれてしまった人間はどうなるのです?

肉体が滅びるまで眠り続けるであろう。ただし意識は既に我ト同化しているがな。

やはり!○○○(プレイヤーの名前が入る)、ロゼはあの中にいるに違いありません!

・・・ロゼが自らあの中に入るとは考えにくいですって?

あの異形のものは無理やり取り込むことはしないと言っておりましたが、どこまで信用できるは分かりません。



何と言っても奴は魔王軍なのです。強制的ではなくとも、騙して取り込むことは平気でするでしょう。

ロゼ!ロゼ!聞こえますか!もう同化されてしまったのでしょうか・・・

ロゼを返しなさい!

おおっと、薙刀など構えて・・・良いのか?

何がです?



我ガ彼にロゼを取り込んでいたとすれば、我ヲ倒すということはロゼを倒すということ。

ロゼがどうなるかは保証できん。我ハロゼなり。

どうすれば・・・

このような体にしてくださった我ガ主を倒せば解放されるやも知れぬ。

気をつけてください、○○○(プレイヤーの名前が入る)。あんな大事なことを私たちに教えるとは、罠かもしれません。



『ヒャッヒャッヒャ』『イヒヒ』『アハアハ』

・・・何がおかしいのです。

我ガ主に勝てるつもりなのが滑稽なのだ。

・・・

貴様らがあのお方に勝てる見込みなど万に一つもない。



あのお方は味方には温情にあふれ、敵には・・・グッ、ゴヴォッ!

(『あ、頭が割れそうだ!』『早く奴らの生気を取り込まないとエネルギーが・・・』『待て!慌てるな!』)

何だか苦しそうではないですか。苦しみから解放されるのではなかったのですか?

我ヲ召喚したのは貴様らではなかったのだな。

王都に魔王軍を引き入れてくれた褒美として遣わされたのだが、ここではなかったか。さらば—



ま、待ってください、あなたを呼んだのは—魔王軍を王都に入れたのは・・・私です。

(『かかった!』『急げ!』)

少し○○○(プレイヤーの名前が入る)と話す時間をください。

我ハ取り込もうがどちらでも良いのだ・・・早くしろ。

○○○(プレイヤーの名前が入る)、怒らずに聞いてほしいのです。



亡くなった弟子に会わせてやる、という魔王軍の甘言に乗せられ、私は—

彼らを王都に引き入れる手はずをしてしまいました。

その結果としてロゼがこのようなことになってしまい・・・責任を感じています。

これから私はロゼを探すべくあの異形の中に取り込まれます。

探せるかどうかも分かりませんが・・・完全に同化する前にあなたに結果をお伝えできるかもしれません。



その後は一刻も早くこの場を立ち去ってください。

ここは私の夢の中、私が取り込まれてしまえば、この場がどうなってしまうか分かりません。

・・・そのような危険を冒す必要はないとおっしゃるのですか?

私は王都の元師範でありながら魔王軍に内密した裏切り者なのですよ?

・・・あなたはお優しい・・・ただ何も分かっていない。



私は取り込まれて弟子に会いたい一心なのです。誰からも罰も赦しも必要としていないのです。

私は弱い人間なのです・・・これは私の形見です。私のことを忘れないでくださいね。

お待たせしました。私を・・・早く私を取り込んでください。

グワワワワワワ!!!!ギギャギャガ!!

くぅぅぅ!ロ、ロゼはいませんか!?ロゼ!ロゼ!



あぁ!?あなたはかってロゼと呼ばれていた女の子ですか!?

○○○(プレイヤーの名前が入る)!ロゼが!ロゼがここにいましたよ!早くここを出てこの異形の主を・・・

闇が眩しい・・・あぁぁ、ようやく・・・ようやく会えましたね・・・

【第六章へ続く】



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