第二章 門番の男

 
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9/29~10/12
前章→第一章 はじまりの花言葉
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門番の男 ネテス・アッテンボロー

・・・この屋敷に何か用かな?
俺はこの屋敷の門番をしているネテス・アッテンボローだ。
門の中に入れてくれって?おいおい、唐突だな。
まぁ落ち着いて。何か理由があるんだろ?聞いてあげるから訳を話してごらん。
・・・いなくなった友達を探してるのか。


誘拐かもって?なるほど、それは確かに俺でも慌てるな。
俺も何か力になれないかな、どんな子なの?
名前を言われても分らないな・・・その子の写真何か持ってないのか?
ふむ、この子がロゼか・・・悪いけど、見たことはないな。
門番の俺が見てないんだから、このあたりには来てないと思うよ。


俺はそもそも誘拐かどうか疑わしいと思うけどな。
いや、俺にも同じ年頃の妹がいるからな、君の不安はよく理解できるよ。
でもその子が自発的にいなくなったのかもしれないだろ?
思春期の子が家出をするのはそんなに珍しくないだろ?
だから意外と本人は探されることを望んでないかもしれないな。


さぁ、俺はその子を知らないから原因まではわからないさ。
ただその年頃の子なら、周りの人間関係で頭を悩ますんじゃないのか?
おいおい、怒るなよ。何も君が原因とは言ってないんだから。
いずれにせよ、ここには来てないから他を当たりな。
もしその子がここに現れたら、君に連絡するように伝えておくから。


後はそうだな・・・さっきの写真を預けてくれるなら、仲間にも何か知らないか聞いてみるよ。
他に何か俺にできることはあるかな?・・・そっか、この程度しか協力できなくて申し訳ないが。
君が非礼を詫びる必要はないよ。それが友達を思うからこその行動というのが俺には分かってるからな。
早く見つかることを俺も祈ってるよ。じゃあな・・・
まだ何かあるのか?・・・これ?光ってて綺麗だろ。


おや、君も似たものを持ってるんだな。君はロゼから貰ったのか。
俺は門の近くで拾ったんだ・・・何だよ、帰るんじゃなかったのか?
やっぱり屋敷の敷地内に入れてほしいって?
これが落ちてたってことはロゼが近くにいるんじゃないかってことか。
なるほど、なるほど。何かあってからでは遅いもんな。


自分の目で敷地内を捜索したいと考えるのは至極当然だな。
そして、諸事情を鑑みて俺の答えはもちろん—「ノー」だ。
そりゃそうだろ?誰でも入れていたら門番の意味がないだろ。
君の事情は理解したよ。理解して考慮して判断したんだ。今度は君が俺の事情を理解する番だ。
俺にはさっきも言ったように妹がいるんだ。妹は幼い頃からとても病弱だったが―


物心がついた頃には、我々兄妹に親と呼べるような大人はいなかった。
我々兄妹は寄り添って憎しみの灯を絶やさぬよう努力を惜しまなかった。
社会への憎しみこそが我々を生かしてくれていたからな。
俺は世の中の理不尽と不遇を嘆き、妹の病気の前では無力さに打ちひしがれていた。
そんな俺たちを拾ってくれたのが—この屋敷の主だった。


俺はここで門番として住み込みで働き、妹もここで元気を取り戻した。今では俺より元気なくらいだ。
だから俺は主のためにも門番としての職務を立派に果たさないといけないんだ。
ん?思い出した?何を?・・・そんなに言いにくいこと?
この屋敷に関する噂?・・・いいよ、怒らないから言ってみな。
・・・ここの屋敷の主が魔王軍と関係あるんじゃないかって?


・・・だとしたらどうだって言うんだよ。
おっと、身構えたりして、どうするつもりだ。
まぁ、剣の構えを解けよ。俺の言い方が悪かった。
俺にとって重要なのは、俺と妹が平和に暮らしていけることなんだよ。
さっきも言っただろ。俺たちを拾ってくれたのは、王様か?魔王か?


俺にとってはここの主こそがすべてだ。
主が魔王軍だろうが王国軍だろうが俺にはまったく関係ない。
・・・とは言っても、主は俺の知る限り魔王軍とは何の関係もない。俺が保証する。
安心しろ。俺も魔王軍は大嫌いだ。早くなくなればいいと思ってる。
主が魔王軍だなんて、まったく誰がそんな噂を流したんだ。


そんな噂を流す奴の方がきっと—おっと、推測でものを言うのは良くないな。
まぁそういうわけで、君を門の中に入れることはできないな。
恩義のある主を失望させたくはないんだ。
分かったら帰ってくれないか。お役に立てなくて申し訳ない。
まだ食い下がるのか?君もなかなかしつこいな。


いなくなったのがロゼじゃなくて、妹だとしたらどう思うかって?
・・・別に何とも思わないな。俺には関係ないし。
君と同じように敷地内に押し入ってでも探すだろうって?
そうか?俺ならそんな馬鹿な妹は放っておくね。
それでも本当に兄かって・・・あ、当たり前だろ!本当に兄貴に決まってるだろ!


本当に兄なら屋敷に押し入ってでも探すはずだって?
そ、そりゃそうだろ!俺ならこの星を掘り尽くすまで探すさ!
それと同じ?し、しかし君が探してるのは俺の妹じゃないし・・・
それにこの中にいるっていう証拠だって何も・・・
・・・や、やめろよ!屁理屈で俺を追い詰めるのは!


やめろ!これ以上ごちゃごちゃ言うなぁぁ!!!ああああああ!!!
あぁぁ・・・感情を解放するのは気持ちがいいなぁぁ!!
・・・ふぅぅ・・・
・・・悪い。たまに俺は感情をコントロールできなくなるんだ。
もう落ち着いたから、大丈夫だ。


でももう帰ってくれ。これ以上、俺を怒らせるとどうなるか分からないぞ。
何だ、最後に一つお願いというのは。
俺の妹に会わせてくれって?
なぜだ?俺に妹がいることを疑ってるのか?
あぁ、ロゼについて何か知らないか聞きたいのか。


聞いてやっても良いが・・・多分この時間は外出しているな。
戻ってきたらロゼについて聞いておいてやろう。
自分で聞きたいだと?・・・いや、今日は妹は友達のところに泊まってくると言っていたな。
・・・分かった、分かった。君の熱意には負けたよ。
明日またここに来たら会わせてやるよ。だがら今日は帰りな。


・・・また来たか。妹に会いに来たのだな?
その妹だが、実は—
昨日から行方知れずなのだ・・・
俺も色んなところを駆けずり回っているのだが・・・・
もしかすると君が探している子と関連しているのかもしれない。


ということだから、俺はまた今から探しに出かける。
もし何か分かれば君に連絡するから。
君は同じ年頃の女の子が他にもいなくなっていないか調べたほうがいい。
何だがすごく嫌な予感がするな。
何か事件に巻き込まれていなければいいんだが・・・


もしかしたら魔王軍が・・・いや、何も証拠がないのにこういうことを言うのは良くないな。
あぁ、そういえばこれ—
君にあげるよ。昨日怒鳴ってしまったお詫びだ。
いいんだ、いいんだ。それが君を正しい道に導いてくれるよう祈ってる。
それじゃあ・・・また会おう。
【第三章へ続く】


雇われ門番 ネテス・アッテンボロー

・・・やぁ。僕に何か用かな?
僕はこの屋敷の雇われ門番 ネテス・アッテンボローさ。
あ、足元に気をつけてね。葉っぱで作った舟が並べてあるから。
この舟は一つ一つ僕の手作りで—え、人を探してる?
ロゼ?聞いたことないなぁ・・・


でね、この舟は葉っぱの先端と二つに割って—何?この写真。
へー、この写真の女の子がロゼっていうんだ。ずいぶんおしゃれだね。
え、おしゃれコンテストの写真?へー、楽しそうだね。俺も応募しよっかなー。
でも僕、いつもこの格好だからダメかなぁ。何色かカラバリは持ってるんだけど・・・
テーマは「海」「騎士」「パーティー」か。その中だと僕に合いそうなのは・・・騎士?


あぁ、ごめんごめん。話が逸れたね。
葉っぱの舟の話だっけ。え?ロゼの話?
うーん、見たことないなぁ。こんなおしゃれな格好をしてたら見かけただけでも覚えてると思うんだよね。
だって剣を持ってるんでしょ?・・・あ、家出したときはこの服装じゃなかったんだね。
え、その子は家出したの?


分かるよ、きっと毎日辛かったんだろうね・・・
会うたびに屋敷の主からチクチク嫌味を言われたり・・・
それとも後輩たちにバカにされるのかな?言うことを聞いてくれないとか。
挨拶するときに、間違えてこっちが後輩に頭下げちゃったりしてさ。
分かる!分かるよー、そのやり場のない悔しさ!


え、違うの?唐揚げを取られて家出した・・・?
いやいや、まさか、そこには深い理由が・・・唐揚げを・・・唐揚げ・・・ないか。ないな、うん。
・・・ま、まぁ何が辛いかは人それぞれだからね。
あー、羨ましいなぁ・・・何がって?家出がさ。僕も家出したいよ。
家の外にいる門番が家出っていうのは変かも知れないけど。


だって後輩が言うことを聞かないんだもん。誰でも通しちゃうんだよ?門番の意味ないじゃん。
こないだも『かくまってほしいんですの!』って言ってきた女の子を後輩が何の相談もなく、屋敷の中に入れちゃってさ。
しかも屋敷の主には僕が通したと思われちゃって、また怒られるしさ。
何て言われたと思う?『もし今度お前が—』え、その女の子?僕は顔を見てないから分からないよ。
その女の子がロゼかもしれないって?今どこにいるか?


もう主が追い出しちゃったからここにはいないよ。
後輩?後輩は確かにその女の子を見たんだろうけど、仕事を放ってどっかに行っちゃったよ。
ほんとはこの時間はあいつらのシフトなんだよ!?
でも門番がいなくて誰かに入られたら、怒られるのはまた僕だし・・・
何で強く言わないんだって?そ、そんな、主に逆らったらクビになっちゃうよ!


あぁ、後輩たちにね。強く言えないかなぁ。
僕はなるべく人を傷つけたくないんだよね。人に限らないけど。
それだったら僕の中に溜め込んでこうやって君に愚痴ったほうがましかな。君には悪いけど。
愚痴ついでにもう一つ聞いてよ。
こないだもさぁ、知らない奴が勝手に屋敷に入ろうとしたんだよ。


当然止めるよね?門番ってそういう仕事だからさ。
厳しく注意したんだよ。勝手に入っちゃダメだぞ!って。
そしたらその知らない奴がさ、急に怒るわけ。『主の顔を忘れたのか!』って。
そいつが何を言ってるか分からなかったからさ、身分証を見せてもらったんだよ。
そしたらびっくりだね。よく見たらその知らない奴は、知ってる奴、っていうか屋敷の主だったんだよね。


まぁ向こうは最初からそう言ってたんだけど。
主はいつも帽子をかぶってたのにさぁ、そのときはかぶってなかったんだよ。
それなら分かるわけないよねー・・・まぁ、これは後輩じゃなくて僕が悪い話なんだけど。
でも主がすごく怒っちゃって。『罰として今後お前はアリ一匹通すな!』って言うんだよ。
「アリ一匹」って例え話かと思ったら、アリが門を通っただけでほんとに怒るんだよ!?


今度アリでも人でも許可なく入れたらクビだって。
だから僕は門の前に葉っぱの舟をたくさん用意してるってわけ。
これにアリが乗ったら―あ、ほら、こういうふうにアリが乗ったら僕が葉っぱを持ち上げて——
こうやって離れた場所まで持っていってアリを降ろすんだよ。
こうするとアリは門の中に入らないし、アリも傷つかずに済むだろ?


ただし、この方法だとアリが一度にたくさん来るときは大変なんだよね。
君もちょっと手伝ってくれない?え、面倒?
アリを指で弾き飛ばすのも傷つけるみたいで可哀想だしね。
何でそんなに傷つけるのを嫌がるのかって?
・・・僕はこう見えても、これまでたくさんの人を傷つけたんだ。肉体的にも精神的にもね。


昔、ある女の子を騙したことがあってね。これについては騙すつもりはなかったんだけど、結果的にはそうなってしまったんだ。
こないだ偶然その子と再会してね、騙したことを謝ったんだよ。謝罪なんて受け入れてくれないだろうと思ったけど。
そしたらその子・・・謝罪を受け入れてくれるどころか、また僕の言うことを信じてくれて・・・
本当のことを言うと、そのときもまた僕はその子を騙すつもりだったんだ・・・お、怒らないでくれよ!
でもあんまり素直に信じられてしまって、そのときに僕は「あぁ、これ以上この子を悲しませたくないな」って―


わ、わ!急にアリが大挙して押し寄せてきたぞ!?
あわわわわ、こんなに来られると一人じゃ運びきれないよ。
え?君も手伝ってくれるの?ありがとう!
じゃあバケツリレー方式で運ぼう!僕が門から君のところに葉っぱの舟を運んでくるから。
君はもっと離れた場所でアリを降ろしてあげて!


・・・ふぅぅ、キリがないね。何でアリは次から次へとこの屋敷を目指すんだろう・・・?
え?屋敷の中・・・?あ!唐揚げが落ちてる!アリはこれを目指してるのか!
一緒に唐揚げを屋敷の外に投げてくれないか!えいっ!
あぁ、蟻の群れが唐揚げのほうに向かい始めた・・・すごい唐揚げだな・・・
あれが唐揚げセンパイっていうの・・・?噂には聞いてたけど・・・


それにしても何でうちの敷地内に唐揚げが・・・
あ、唐揚げを投げてもらうために君を敷地内に入れちゃったね。
まぁ誰にも見られてなければ・・・ハッ!?後輩たちがニヤニヤしながらこっちを見てる!
さてはお前らが敷地内に唐揚げセンパイを置いたな?
どこに行く!主に告げ口する気だな!?あ、待て!待って!お願い、待ってください!


・・・行っちゃった・・・ごめんね?見苦しいところを見せちゃって。
大丈夫だよ。あいつら、いたずらが好きなだけでいいところもあるから、主には言わないよ、きっと・・・多分・・・
痛っ!何で背中を叩くの!?・・・地面に落ちたものを食べちゃダメだって?何で僕が唐揚げを拾い食いするんだよ!
胃が痛いから、君に見られないように胃薬を飲もうとしただけなのに・・・薬がこぼれちゃったよ。
あれ?何だろう、これ。うちの屋敷の人たちの持ち物ではなさそうだけど。


あぁ、元々はロゼっていう子の話だったね・・・少なくとも今はこの屋敷にはいないよ。
他の家を探したほうがいいんじゃない?
それかしばらく放っておけば、家出にも疲れて戻ってくるかもよ?
じゃあ僕はまだアリを運ぶ仕事があるから・・・
その子を見つけたら家に帰るように僕からも言っておくよ。


あ、そうだ。たった今拾った、これ。
アリを運ぶお手伝いをしてくれたから、君にあげるよ。
ありがとう、うん。その子が早く見つかるといいね。じゃあ・・・
・・・さてと、君を探してた子はもう行ったよ。
君も別のところに行ったほうがいいかもね。これ以上はこの屋敷でかくまうのは難しそうだし。


無事だってことだけはお家に連絡しておくんだよ。それじゃあ・・・
『ありがとうですの』か・・・人から感謝の言葉を言われるなんていつぶりだろう・・・
【第三章へ続く】


厳重門番 ネテス・アッテンボロー

・・・何だ、貴様は。
この屋敷に用はないだろう。邪魔だ。立ち去れ。
ロゼを見なかったか、だと?そんな名は聞いたことがない。
何だ、この写真は・・・この写真の子がロゼか。知らぬ。
だいたい、なぜ私に聞く。私はこの屋敷のただの門番だ。


貴様がそのロゼとやらにこのあたりで最後に会ったとしても、それがどうしたというのだ。
何?ロゼが眠ったまま目が覚めない?ふん、戯言を弄すな。
それなら、もし貴様が夢の中でこの屋敷までたどり着けたら話を聞いてやる。だから分かるだろ?失せろ。
・・・私が一瞬、笑っただと?ふふん、貴様、なかなか目ざといな。
私は今、ある連中が来るのを待っているのだがな。そいつらが約束の時間を過ぎても現れぬ。


だから現れたときに、どんな罰を与えてやろうかと思案中でな。苦しむ姿を想像して思わず笑みがこぼれたのだ。
罰を与えるのは実に愉快極まりないな。創造性と嗜虐心が刺激され、アドレナリンの分泌が体感できる。
せっかく複数人いるのだから、片方が何か失敗したら、もう片方が罰を受けるような仕組みを―
何だ、人が妄想に耽溺しているというのに・・・
屋敷の主が元魔王軍か、だと?不躾な奴だな。


主の情報を他人に与えるのは、門番としての契約違反だ。そんなことをしたら主からどんな罰を受けるか・・・
執拗だな、貴様。ロゼのため?ふん、執拗な奴は嫌いだ。なぜなら執拗だからな。
私は何も知らぬ。ロゼも知らねば元魔王軍も知らぬ。朝の光も知らねば夜の闇も知らぬ。
あぁ、一つだけ知っているな。これ以上私にまとわりつくと、貴様が朝も夜も分からぬ体になるということをな。
待てよ。それよりも何か罰を与えるほうが良いな。朝日が二度と見えぬような罰・・・おいっ、待て、帰るな!


・・・喫驚だな。まさか貴様が本当に夢の中でこの屋敷に現れるとは・・・
仕方ないな。私が知っている限りのことは教えてやろう。
貴様はこの主が「元魔王軍」かどうか聞いていたな。答えは―否、だ。
彼は「元」魔王軍ではない。今も「現役」の魔王軍だ。
もしロゼという女の子が夢の世界から戻ってこないのであれば、ここの屋敷の主が関わっている可能性が高い。


私のたった一人の身内・・・妹も同じ状況だ。
妹は夢の世界に捕らわれているため、私は魔王軍ではないがここの主には逆らえぬ・・・
この屋敷の中は他人の夢の中へとつながっている。
恐らくロゼも他人の夢の中で迷子になっているか、自分の見たい夢の中から目覚めたくないのだろう。
貴様がもし本当にロゼを起こしたいのであれば、屋敷の中に入ってロゼを見つけ出して起こすか——


屋敷の主と交渉して夢の世界から出してもらうかだが・・・どちらも簡単ではないだろうな。
しかもこの屋敷の中は誰の夢につながるかは分からない。
ロゼの夢に入れる確率は限りなくゼロに近い。下手すると貴様も戻ってこれなくなるぞ。
ミイラ取りがミイラになるようにな。それでも行くのか?
・・・なぜだ。今の話を聞いていたか?勇敢なのか、それともただの・・・


約束したから?ふん、口約束なんぞ何の拘束力もない。裏切っても誰も文句を言えぬ。忘れてしまえ。
・・・この話をしても果たして、まだ貴様は約束に価値を見出せるかな。
——貴様も知っているだろう。ギルドが結成されるきっかけになった魔王軍の侵略を。
魔王軍がこの王都に侵入してきたのは、私がまだ子供の頃だった。
当時、病気がちだった母は王立病院に入院しており、父がそれに付き添っていた。


当初は王都軍が劣勢だったため、魔王軍の侵略方向の病院にいた母は避難を余儀なくされていた。
しかし病気中の移動は体力を消耗し、病状を悪化させてしまう。
私は勇気を振り絞って、魔王軍に直訴しに行ったのだ。せめて侵略方向を変えてくれ、とな。
まだ私には分別もなかったし、子どものお願いなら魔王軍も聞いてくれるのではないかという甘えもあった。
そのとき私がお願いした相手が、この屋敷の主だ。


主は、私の家族を愛するがゆえの、危険を顧みない勇気ある行動を褒めてくれた。
大勢の敵の前で褒められる気恥ずかしさを今でも覚えている。そして無邪気に敵を信じた後悔も。
主は魔王軍の侵略方向を変えることをその場で快諾してくれた。
私は母親が救われたことを喜び、また勇気が報われたことも嬉しく、病院への道を急いだ。
ところが病院に着いてみると、そこは既に魔王軍が侵略していたのだ。


主は元々約束なぞ守るつもりはなかったのだ。ただ子どもをからかい、喜ばせておいてから失望させたかったのだ。
私はそのとき子供ながらに悟った。「約束などというものは弱者が行うものだ。力があれば約束など不要なのだ」と。
そして何の因果か、今の私は主のもとで門番として働いている。
後で聞くところによると、主は侵略の方向を変えるよう指示したらしいが、間に合わなかったらしい。真偽は分からぬが・・・
私が貴様に教えられるのはこれだけだ。それでもまだ屋敷の中に入るというのなら私は止めぬ。


・・・ふん、礼などいらぬ。私が貴様に主の情報を与えたのも、貴様との約束を守ったわけではない。
貴様の勇気―子供の頃の自分の勇気―に応えてのことだ。
そもそもそんな簡単に私の言うことを信用してよいのか?
真の敵は味方の顔をしてやってくるのだ。
騙されることは恥じゃない、だと?ふん。


やはり行くのか・・・貴様なら行くのだろうと思っていたが。
最後に一つ、貴様に謝罪せねばならぬ・・・
実は私はロゼとやらに見覚えがある。主とその子が屋敷の扉越しに話しているのを見かけたのだ。
これは推測だが、主はその子を夢の世界に閉じ込めておく気だろう。
情けないことだが・・・大人になった私は勇気を失い、その子を止めるのを躊躇った。


尻拭いをさせるのは忍びないが、私からも頼む。ロゼを救ってやってくれ。
ただし油断するな。もしかすると主が追いかけてくるかもしれぬ。
主は残虐な上に平気で嘘をつき、約束は反故にする。
何、私のことは気にするな。貴様に伝えたことがバレても構うものか!夢の中までは契約に含まれておらぬからな。
貴様が夢の中でこの屋敷に来られた強運が、この先でも発揮されることを祈念している。


何?運だけでここに来られたわけではないだと?それは何だ?
ロゼから託されたそれがここに導いてくれたのか・・・?
似たようなものなら私も門のあたりで拾ったぞ。
何かの役に立つかもしれぬ。持っていくがよい。
私ができるのはここまでだ。それでは・・・気をつけるのだぞ・・・


・・・行ってしまったか、変な奴め・・・ん?
何だ、猫か・・・あいつも夢の世界に入り込んでしまったぞ。
【第三章へ続く】


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