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暁月のエンデ

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7/29~8/14

第一回スペボスホワイトデー7位 チョコ365個

第二回スペボスホワイトデー9位 チョコ1195個


紅眼のエンデ

美しい教会よ・・・。夕日に照らされる十字の印よ・・・

西日にステンドグラスはよく映える・・・ふふふ・・・

なんと美しいことよ。我の次に美しい!そう、我の次に!

嗚呼、闇の扉が開かれる音がする・・・!ようやっと、太陽が沈むぞ!

・・・おや、来客か?こんな時間に珍しい・・・



そなた、旅人か?見ない顔じゃな?

こんな時間にこの教会を訪れるとは・・・この村の人間でないことだけは確かじゃな。

そなたは知らぬのか?この村の言い伝えを・・・

この教会は夜に愛されし場所と言い伝えられておるのだよ・・・そう、1000年ほど前からな。

ほれ、そこの窓から覗き見てみよ、教会の周りを。宵待草でいっぱいであろう?



っふ、満月のように美しい色の花だとは思わないか?

我はこの花たちが大好きだ・・・咲き誇る美しき同胞よ・・・共に闇を生きるものよ・・・

不思議な話をしてやろう。この岸壁に立つ教会・・・その周囲を取り囲むように咲いている大量の宵待草。

これらは全て、自然に咲きだしたものなのだ。人の植えたものではない、植えた覚えもないものなのだ。

このような岩場ばかりの場所に、大量の花・・・他には雑草ひとつ、生えておらぬのになぁ・・・ふふ、どうだ、面白いであろう?



おそらく・・・我の闇を抱く力に・・・吸い寄せられてのことだろうがなぁ・・・なに、なんでもない。独り言よ。

つまりはな、この教会は・・・闇を好み、闇を求めるものの集まる場所、ということだ。わかるか?

日が落ちてからこの教会に来るのは危険だ、と・・・そういう意味だ。

村人たちは日が暮れるのを厭い、宵闇に沈むこの教会を恐れている。

なんて、な。まぁ、良い。そなたはそのことを知らずにやってきた。



これもまた、運命。そなたの、運命というものよ。

・・・して、教会に来たということは、そなた、なにか悩みごとでもあるのか?

それとも懺悔かな?ならば聞いてやろうか。それが我の役割、だからの。

ふふ、そう改まるでない。なんでも話してみよ。

ああ、そういえば、すっかり名乗るのを忘れておったな。



我はこの教会のシスター。名を、エンデと申す。

紅眼のエンデ、血のように真っ赤な瞳を持って生まれた、我の異名よ。

いや、いい。そなたの名になど興味はないわ。さて、話の続きだ。

我は迷える者を導くために、ここに居るのだ。それが役割なのさ。

さぁ、遠慮はいらぬ。とくと語ってみせよ!そなたの悩み、苦しみ、そして痛みを!



・・・ふむ・・・ほう、なるほどな・・・うん・・・うん・・・

・・・言いたいことは、それで終わりか?

はっはっっは!なんじゃ、大したことないのう。期待はずれだ!

悩むほどのこともない、苦しむほどのこともない。些末事よ。期待した我が愚かであった!

人というのは、小さきものよ・・・これしきのことで・・・暇つぶしの与太話にもならぬわ。



良いか、人間。アドバイスをくれてやろう。心して聞くが良い。

人というのは、いずれ誰もがこの世を去る。誰もが、だ。例外などない。

そして、お前たち人間の生きる時間とは短きもの。

我にしてみれば、ほんの一瞬だ・・・

すなわち、思い悩むだけ無駄なこと。悩んだところで、冥途にまでその想いを持ち込めるわけでもなし。



死すれば悩みなど全て無意味なものになるだろう?ふふふ。

さぁ、それがわかれば、もう下らないことに頭を使うでないよ。

そんなちぃっぽけなことで気を揉むな。愚か者。

限りある生という時間。もっと有意義に生きよ。一瞬間を大事にな。

・・・死、というものは・・・存外、近くに佇んでいるものだからの。ふふふ・・・そう、存外、近くに、のぅ・・・



そなたの命も、もしかしたら・・・ふふ、そう、もしかしたら・・・

今宵のうちに、散るかも知れぬ・・・ふふ、そう、今宵のうちに・・・

ん?我は一体、何者なのか、と?

先ほども名乗ったであろう?この教会のシスターだ。

・・・日の、光のあるうちは、のう・・・

さぁ、夜の帳が落ちるぞ?逃げるなら、今。そう、今のうちだ・・・



碧眼のエンデ

あ~なんて良い天気だ・・・テンション下がるのぅ・・・

夜明けなど来なければいい・・・とまでは言わないが・・・

せめて曇り空ではあって欲しいものよ・・・はぁ~・・・憂鬱じゃ・・・

こう、お日様がギラギラしているとなぁ・・・気が滅入ってくる・・・日傘が必須じゃ。煩わしい!

しかもこの教会、晴れると決まって観光客がぞろぞろとやってくる・・・



ステンドグラスが綺麗だとかなんとか・・・古い歴史がどうのとか、こうのとか・・・

こんな晴れた日ではなく、夜月に照らされた姿のほうがよっぽど品があって美しいというのに。

それを知らないで、こうして昼間にウヨウヨと集まってくる。よくもまぁ、ゾロゾロと集団で動けるものじゃ。

やはり人間とは可笑しな生きものよのぅ・・・

まぁ、そもそもこの村には観光できるような場所、ここしかないからのぅ・・・集まってきてしまうのも、仕方なし、か。



はぁ、それにしても・・・シスターの仕事も楽ではない・・・

この我が人間のために働く日が来ようとは・・・

この教会を根城として早1000年・・・今更どこかへ行くのも億劫だしのぅ~・・・

・・・おや、そなた、また来たのか?本当に学習しないな、人間とは。

今度は昼間に来たから安全だろうって?こんなにたくさん人もいるし?



ハッ!あまり我をなめるでないぞ?

表向き、昼間はこうしてシスターをしているが・・・

我の正体を知っている者には、容赦などせぬ・・・

たとえ大勢の人前であろうとも、なぁ?

・・・なんじゃ、つまらぬ。怯えもせぬか。むぅ・・・



もっと怯えて震えて助けを求めてみせよ!我がつまらぬではないか!

え?退屈しているのか、だと?そりゃぁ・・・

我はこの教会でたったひとりのシスターだからの。

話し相手は、異国からの観光客や懺悔に来る村人ばかりよ。異国の言葉はちっともわからぬし、懺悔など聞いたところで暗い話ばっかりじゃ。

たまには骨のある奴と話がしたい、と・・・そう思わんでもない・・・思わんでも、ない。



いやべつに、そんな、そなたと話したいとか、そういうことでは・・・!

ええい!そなたといると調子が狂う!それに、今日が晴天であるのが悪い!!

圧倒的に我の不利ではないか!!

もういいから、どっかいけ!!我に構うな!!

え、は??眼の色??眼の色が前に会った時と違う・・・?



そなた・・・意外とよく見ておるな・・・びっくりしたぞ・・・

ふん!我ほどの力の持ち主となれば、眼の色を変えるくらいお手の物よ。

今はシスターをしている時間。碧眼ならば人間もそこまで恐れないであろう?

碧眼のエンデ。それが今の我の名よ。

別に、人間に気を使っているとか、そういうことではない!!



我の生活に関わることだからだっ!!仕方なくだ!止むを得ずだ!!

我とて現代に生きるもの。生きるにはそれなりに金がいるだろう?生活費というやつじゃ。

シスター業は金稼ぎよ。でなければ人間のために、こんなことせぬわ!

わかったらそなたもなにか買っていけ!ほら、そこに売店があるから!

蝋燭とか、百合の花とか、あと霊験あらたかな札とか!売ってるから!



せっかく来たのだ!なんでもいいから、我に貢いでから帰れ!!

・・・ちなみに、札はオススメだぞ?本当に我が力を込めたからの・・・

その札を買ってくれたら・・・そうだな・・・

夜にまたこの教会を訪れても、一度くらい見逃してやらんこともない。

はぁ!?別にまた来て欲しいから言っているわけではないわ!!



なにを勘違いしておるっ!!いい加減にせよ!!

・・・しまった、大声を出してしもうた・・・我としたことが・・・!

観光客がみんな我のことを見ているではないかっ!そなたのせいだぞ!

ふっ・・・我もこの美貌ゆえ、見られることには慣れているかな・・・

呆れたような目線を向けるなっ!!ちょっとした戯れだ!!ノリの悪いやつめ!



冗談のわからぬ奴は好きではないっ!さっさと帰れっ!

あ、売店に寄って行けよ?今なら特別に、2割引にしてやろう!感謝せよ!!



金眼のエンデ

時は来たり!!待ちわびたぞ、この時を!!

闇の気配じゃ・・・ようやっと、ようやっと、我の時間がやってきた!

はぁ、昼間のなんと長いことよ。なんと忌まわしいことよ・・・

だが、それを堪え忍び、そして迎えるこの瞬間がたまらぬ・・・!

今夜は満月だ!!!ああ、力が漲ってくる!!



宵待草もより一層その色を鮮やかに・・・ふふ、美しく咲き誇っておる。

さて・・・おい、人間!そこに隠れているのはわかっているぞ?

さっさと出てこい。我の前では、逃げることも隠れることも無意味ぞ。

我の忠告も聞かず・・・こんな時間までこの教会に居残るとは・・・

ふふ、余程の阿呆か、それとも・・・



ああ、そう慌てるでない、慌てるでない。今更帰ろうとするな。

せっかくじゃ、そなた、我の食事に付き合わぬか?

遠慮するな。さぁ、そこに座って・・・楽にしておれ。

ん?どうした?緊張しているのか?肩に力が入っておるぞ?

深呼吸してみろ。ゆっくり。そう、全身の力を抜いて・・・



なんだ?我の顔になにかついているか?

ああ、眼の色か。そうだ、夜になればまた、我の眼色は変わる。

とくと見るが良い。美しい金眼であろう?まるで宵待草の花の色だ。我はこの色が大層気に入っておる。

ふふ、もっとじっくり見よ。金眼のエンデと呼ばれし我の瞳を・・・

そう、闇に満ちたこの時間・・・我の名は、麗しの吸血鬼、金眼のエンデ・・・!シスターではない!!吸血鬼よ!!



ふふふ・・・とうとう知ってしまったなぁ、我の秘密を!!知ったからには・・・帰れると思うなよ?フ・・・ハハハハハ!!!

以前、我はそなたに言ったはずた。人間の生など一瞬だと!

だから大切に生きねばならぬとな!!今更悔いても遅いわ!

そなたの命も、今夜、そう、今夜までよ!!

我の忠告も聞かず、こんな夜更けまでここに居続けたのだ。



すなわち、我に喰われても、なんの文句もない、ということだろう?

さぁ、さぁ!!我は腹ペコじゃ!!さっさとそなたの血をよこせ!!!

ああ、焦って食事をしては勿体ないのぅ・・・人間の血は久しぶりじゃ!ゆっくり味わうとしよう・・・ふふふ・・・

我らの生は幾億年よ・・・我らを前にして、人間のなんとちっぽけなものか・・・

皆どうせすぐに死んでしまうのだ。我を残して、な。ただ塵介のようになってしまう。



だったら、いっそうのこと・・・我の生きる糧となって死ぬ方が、有意義というものだろう?我の血肉となり、共に幾億年を生きるのだ!

さみしい?なんだ、それは。

ふん・・・そのような気持ち、とうの昔に忘れたわ。

人間は嫌いじゃ。調子のよいことばかり言う。口ばかり達者なのだ。

我はただ、孤独に闇と生きるのみ・・・



馴れ合うつもりなどない・・・無意味じゃ。経験から知っておる。もう十分に、知っておる。

そなたは良い奴であったよ。話していて、楽しかった。

けれど、もう仕舞じゃ。これ以上は・・・さぁ、大人しく血をよこせ。

・・・なぜ、抵抗しない・・・?このままだと、そなた、死ぬのだぞ?

我に血を吸い尽くされて・・・そなたは死ぬのだ・・・!わかっておるのか?!



・・・なぜ、笑う・・・我が怖くはないのか!?

あまり舐めるなと言ったはずじゃ!!ええい!!!喰らってやる!!喰らってやるぞ!!!

なっ、そ、それは・・・!

我が昼間、売っていた・・・札!?

・・・そなた、本当に買ったのか、それを・・・



いや、まぁ、買えと言ったのは我じゃが・・・高かったのに、よく買ったな・・・本当に阿呆なのか??

たしかに、約束した・・・その札があれば、一度は夜に来ても見逃すと・・・

チッ・・・仕方ない!!食事はまた今度じゃ!!!

次に来たら、本当に本当に喰らってやるからなっ!!

はぁ?!優しい、など、っ・・・ふざけるなっ!!あまり我の気を害するではない!!照れてなどおらんわっ!!



さっさと去れ!!もうそなたに用はないっ!!食料にもならんやつと一緒にいても、どうしようもないわ!

・・・まぁ、話し相手にくらい、なるかもしれんがの・・・?

・・・そなた、昔話は、好きか・・・?

もし、そなたがど~~しても、まだ我と共に過ごしたいと言うのであれば、仕方ない。

我は心の広い吸血鬼ゆえ。昔話でも、聞かせてやろう。



ざっと1000年ぶんほどある。ふふ・・・途中で居眠りでもしたら許さんからな?

とくと聞け。我の宵闇と孤独、そしてほんの少しの希望の物語を・・・!



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