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幻術士三姉妹

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6/15~6/29


光の幻術士イルーシュ

はじめまして、私は光の幻術士イルーシュ。騎士団専属の術士なのです。よろしくお願いしますね。

幻術の腕前は結構褒められるんですよ。ちょっとだけ、おっちょこちょいなのが玉にキズとは言われますが・・・。

騎士団に入ってから、まだ目立った活躍ができていないのは、もしかしたらおっちょこちょいのせいかもしれません。

そういえば、今度国王様のお誕生日に、盛大に式典をやるらしいですよ。知ってましたか?

騎士団全員で、国王様のお誕生日式典のパレードに参加するんです。もちろん私も参加が決まっています。



パレードは国をあげて盛大にやるので、あなたもきっと楽しめますよ。

でも、楽しむだけではいけません!国王様がご出席なさりますから、気を引き締めて参加しなければ・・・

私は幻術士なので、パレードで観客の皆様に幻術をお見せするという役割もあるので、責任重大なんです。

どんな幻術をお見せしましょう・・・炎?水?それとも・・・悩みますね。

ちゃんとできるかどうか、少し不安になってきちゃいました・・・。



ありがとうございます。そんな風に言っていただけると、勇気が湧いてきます!

励ましていただいた分、素敵な幻術をお見せできように、しっかり特訓しますね!

いざというときに、いつものおっちょこちょいを発揮してしまったらいけませんから・・・

え?心配しすぎ・・・ですかね。でも、備えあれば憂いなしとも言いますし。

少し注意深くしておくくらいがちょうどいいのかなと思います。



ええと、あの術とこの術を組み合わせて・・・こうしてみたらいいかな?

あ、ちょっと見てみてくれますか?本番は絶対に失敗したくないので、今のうちに少し練習しておきたくて。

いきますよ、花よ、花よ・・・咲き乱れろっ・・・!

どうでしょうか、綺麗に花が咲いて見えますか?わっ、ちょっと花を出しすぎましたかね・・・。

今度はどうでしょう・・・えいっ!あ、あれ・・・今度は花が少なすぎますね・・・。



そ、それっ!次こそ成功させますっ!

よ、よかった・・・この調子で、本番もがんばりますね!

おはようございます、いよいよパレードの日ですね。

緊張?ええと・・・少ししているかもしれません・・・。

でも、練習はたくさんしましたし、きっと大丈夫です。



上手くやってみせますから、しっかり見ていてくださいね。

わぁ、凄い歓声・・・!国中の人たちがここに集まっているんですね。

胸がドキドキしています・・・口から心臓が飛び出してしまいそう。

幻術がパレードの目玉ですから、責任重大・・・絶対に失敗は出来ません!

あ、小さな女の子がこちらへ向かって手を振っています。とても楽しそう・・・。



パレードを見ている人たち、みんなとても素敵な笑顔ですね。

少しずつ、ですが・・・ドキドキが収まってきました。

パレードを楽しむ人たちを、もっともっと笑顔にしたいという気持ちが強くなってきて・・・。

それでは、いきますよ・・・!

それっ・・・花よ、花よ・・・咲き乱れろっ・・・花びらを降らせろ!



上手くいきましたっ!

では、今度はこれです・・・星よ、星よ・・・天から溢れて、輝きを増せ・・・!

あっ、みんなとても喜んでくれています!よかった・・!

次はこれです。七色に光る架け橋よ、その光で大空を渡れ・・・!

凄い歓声です・・・!どこを見てもみんなの笑顔が目に入ってきます。



・・・あれ?なんだか今、何か妙な影が見えたような気が・・・。

あの人・・・どうしたんでしょう。何か、変な動きをしているような?

建物の影に身を潜ませて、一体何を・・・。

えっ?あれは・・・魔法陣・・・!?

うそ・・・黒魔術を使っている・・・ということは、あの人は黒魔術師!?



なぜ、こんな所にいるんでしょうか?

まさか・・・。やっぱり、国王様の方をじっと見ています・・・!

どうしましょう・・・このままでは、国王様の命が危険かもしれません。

でも・・・ここで騒ぐと、観衆たちがパニックを起こして、さらに危険なことが起きてしまうかも・・・。

騒ぎに乗じて、国王様に危害が加えられてしまう可能性もあります・・・。



それは絶対にいけません!どうにかしなければ!

そうだ、私はおっちょこちょいだとみんな知っているのだから、ドジをしたふりで・・・それ!

空から落ちろ、雷よ、雷よ、天の怒りを不届きな者へ落とせ!

命の源、水よ、流れる水よ、禍を増して大きくなり、あの不届き者へ向かえ!

燃え盛る熱き炎よ、罪人を焼き払え!



ああ、よかった・・・黒魔術師は逃げたみたいです。これでひとまずは安心ですね。

周りのみんなは私がドジをして、間違った場所へ魔術を使っていると思っているみたいです。

またイルーシュのおっちょこちょいか!あの子って本当に間抜けよね・・・なんて声が聞こえてきます・・・。

でも、笑われてもいいんです。国王様やここにいるみんなが無事なら、それで十分なんです・・・。

パレードも無事に終わって、物凄い拍手が聞こえてきました・・・!



あれ?国王様・・・ですか!?どうしてここへ?

パレードは終わったばかりで、まだ国王様は玉座におられるはずなのに・・・。

あの玉座に居るのは影武者!?

国王様は観客たちと一緒にお忍びでパレードをご覧になっていたのですね!?

それで・・・私が黒魔術師を撃退していたところも見ていたと・・・あの、私とにかくどうにかしなければと、必死で・・・。



そ、そんな!感謝だなんて・・・!いえ、あの・・・こ、光栄です・・・。

これからも騎士団の一員として、国のために精一杯努めてまいります!



狭間の幻術士イルージェ

わたしイルージェ。狭間の幻術士って呼ばれてるんだー!得意なのは身を隠す護衛系の幻術!

姉さんが二人いて、二人共わたしと同じ幻術士なんだよ!

小さい頃はかくれんぼで幻術を使って、お母さんやお父さんを困らせてたなー。

・・・と言っても、大きくなった今でも姿を隠していたずらしちゃったりするんだけどねっ!

ふふっ。わたしってぱ、ちょっとオチャメさんでしょ?



今日はうちの国と交流のある遠方の国へ、騎士団のみんなで遠征へ行くの!

国から出るの、久しぶりだから、とってもワクワクする!

旅っていいよねー!初めて見るものがたくさんで、ずっと楽しいから、わたし大好き!

ふぅ!無事に任務も終わったし、早く帰って留守番してたみんなに土産話をしたいなっ!

あれ?行きはここの道、通れたはずなのに・・・落石で塞がっちゃってる・・・!



遠回りになるけど、違う道を通るしかないね・・・。

でも、普段通らない道を行くのって、ドキドキして楽しい!

ひゃっ!?あ、あれは・・・野生のドラゴンっ!

みんな、逃げて!

あわわ・・・騎士団のみんなとはぐれちゃったみたい・・・。



みんな、ちゃんと逃げ切れたかな・・・無事だといいんだけど。

みんな鍛えてるし、きっと無事に逃げてるに決まってるよね・・・!

ドラゴンに見つからないように、幻術を使って身を隠しておこう・・・。

狭間の力よ、我の身体を包み込み、隠したまえ・・・!

よし、これでドラゴンからはわたしの姿は見えなくなった。



念のため、この洞窟の中に入って身を潜めておこう。

・・・あれ?誰か、そこにいるのかな・・・?

あっ、そうだった、わたし姿を消してたんだった。

狭間の力よ、解けろ!・・・これでよし。

こんにちは、わたしの名前はイルージェ。



ねぇ、ずっとこの洞窟に隠れていたの?ああ、君もドラゴンに襲われかけたんだね・・・!

うちの隣の国に留学に来ていたんだ?

もう三日もここにいるの?それは災難だったねぇ・・・!

水も食料も底をつきて・・・ああ、確かに顔色が悪いよ!早く何か食べなきゃ!

ごめんね。今は水と少しの木の実しか持っていなくて・・・少しは足しになるかな?



どうしよう・・・この子ずいぶん弱ってるから、早くお医者さんに診てもらわないと。

でも、まだ外にはドラゴンがうろついているし・・・。

あれ?あの煙は・・・騎士団の誰かが狼煙を上げているんだっ!

よかった、無事な団員がちゃんといるんだね・・・!

よし、わたしもここをなんとか抜け出して、無事にみんなの所へ戻らなくっちゃ。



そんなに心配した顔しないで?大丈夫、任せて!きっとなんとかしてみせるよっ!

行くよ・・・狭間の力よ、我の身体を包み込む、隠したまえ・・・!

あっ、ごめんごめん!驚かせちゃった?

わたしは狭間の幻術士なんだ!

へぇ、君の国では魔術が珍しいんだね?



よーし・・・これくらいの量の石があれば大丈夫かな?

木登りは得意なんだ。小さい頃から色んな場所でかくれんぼをしていたからね!

あっ、ドラゴンがこっちへ来る!

・・・今だっ!エイッ!エイッ!石よ当たれっ!

あれっ・・・投げた石が魔術の力を帯びて、透明になってる!



ヤッタヤッタ!石が透明になったおかげで、全部ドラゴンに当たってるっ!

これで少しは足止めできるかな・・・急いであの子の所へ戻らなきゃ。

大丈夫?ドラゴンは今ダメージを受けてるから、今のうちにここから離れよう!

さぁ、わたしの背中におぶさって。

ふっ・・・ふっ・・・国境の門が見えてきた、あと少しだよ・・・!



あっ、みんな!騎士団は全員無事なんだね?よかったぁ・・・

そうだ。この子を早く医者に診せて欲しいんだ。それと、温かい食事も用意してあげて。

よかった。具合、良くなってきたんだね?

え?お礼?そんなのいいって!君が無事だっただけで十分だからね!

あれっ、国王様!?そんな、勇敢だなんて・・・お褒め頂き光栄です。



あのドラゴンは産気づいていた・・・?国王様、なぜご存知なのですか?

周辺国同士の会議で、ドラゴンの討伐隊の隊長が報告していた・・・そうだったんですね。

そのときは、もっと離れた場所での目撃情報だったのか・・・それなら、注意を払えなくても仕方ないですよ。

え?さっき見張りの兵士が、遠くの空に親子のドラゴンを見つけた?

そっか・・・無事に産まれたんだね。よかった!



きっと、親子でドラゴンの里に向かってるんだ。

誰も傷つかずに済んで、本当によかったよ・・・!



夕闇の幻術士イルージュ

ボクは騎士団に所属する、闇の幻術士イルージュ。どうぞよろしくね~。

幻術を使って色々とお仕事をしているんだ。周りからはちょっと変わり者って思われてる・・・かも?

トカゲの干物や獣の血なんかを持ち歩いていると、みんなギョッとした顔になるんだよね。

どれも幻術の研究にすごーく役立つんだけどなぁ~・・・。

この間も、騎士団の仲間たちと狩りに出かけたとき、魔物と鉢合いそうになったんだけど・・・。



闇幻術で森の小動物に姿を変えてから、敵の魔物の弱点である目を攻撃して倒したんだ~。

みんなが怪我なく無事に帰れて、本当によかったよ~!

仲間が怪我や病気になって苦しんでいるのはつらいからね~・・・。

さて、きょうも元気にお勤めしましょうか~。

え?騎士団の新人団員が行方不明・・・?



隣の国に手紙を届けに行ったまま、まだ戻っていないって・・・。

ボク、その団員のこと知ってるよ。この間、一緒に狩りに行ったんだ。

ボクが持ってたトカゲの干物や獣の血を見ても、気味悪いなんて少しも言わなかった子なんだ・・・。

人付き合いが苦手で、周りからの評判はあまりよくなかったみたいだけど・・・。

騎士団がつらくて逃げ出すなんて、そんな子じゃないはずだよ~!



わかったよ、ボクがその子を探しに行く。

「そんな無駄なことは止めておけ」・・・か。無駄かどうかは、確かめてみないとわからないよね~?

ボクは行くよ。あの子を信じているからね~。

さぁ、出発しようか。あの子に一体何があったのか、ボクがこの目で確かめるんだ。

なんだろう・・・不穏な空気が漂ってきている・・・違和感は、隣の国から・・・?



この違和感、魔力だね~・・・。隣国の城の中から強い魔力を感じる・・・。

ちょっと物陰に隠れて様子を見てみようか~。

あれっ・・・今お城に入っていったのは・・・どう見ても、魔物だよねぇ~。

やっぱり、城下町も全部魔物たちに乗っ取られちゃってるみたいだ・・・。

ああ・・・国王の間の玉座に座っている大きな魔獣・・・あいつが原因か~。



あの魔獣の魔力が外まで漂っていた違和感の正体だったみたいだね~。

どこかにあの団員の子もいるんじゃないかなぁ~。

あっ!あそこ・・・やっぱりいた。魔法で意識を奪われてしまっているみたいだね~。

国の人もみんな、魔獣の魔力で意識を奪われてて、奴隷になっているんだ・・・。

あれ・・・あの人は・・・!国王様だ。国王様まで奴隷にされているなんて・・・。



このまま放っておくわけには、いかないよねぇ。

ボクの大切な友人にひどいことをした落とし前はつけさせてもらうよ~。

闇の聖霊よ、汝の力を我に貸し与え、我の姿形を変えたまえ・・・!

ふふ、ほら・・・これでどこからどう見ても奴隷の一員だよ~。この姿なら、魔獣も油断してしまうはずだ。

魔獣様、魔獣様・・・この奴隷めが、魔獣様の望むごちそうを用意させていただきました~!



肉汁がしたたる分厚いステーキ、みずみずしい果物、焼きたてのパンに、芳酵なワイン・・・どれも極上の品です~。

魔獣様、魔獣様・・・今度は魔獣様に相応しい、様々な輝く宝石・・・そして太陽のように光る金や銀をどうぞ~。

喜んでいただいて光栄でございます~!魔獣様の幸せが奴隷めの幸せでございますので~。

ふふふ、お腹がいっぱいで眠くなってきましたか?ささ、どうぞごゆっくりおやすみくださいませ・・・。

ああ、このまま眠ってしまっては風邪をひいてしまいますよ?毛布をかけて差し上げます・・・。



さぁ、ゆっくりと・・・永遠に眠っていてくださいませぇ・・・!

闇の聖霊よ!この醜い不届き者の目を、まばゆい光で惑わせろ・・・!

みんな!今のうちに逃げるんだよ!さぁ、走って・・・!

ああ、よかった・・・君もちゃんと正気に戻ったんだね~。

おやおや?目を潰したら、魔獣のやつ・・・途端に大人しくなったようだねぇ~。



そんなにしおらしい態度をとられたら、無下にはできないじゃないか・・・。

隣国の国王様・・・魔獣を許してあげるのですか?罪滅ぼしに働くなら許してやる・・・ですか、お優しいんですねぇ。

それじゃあボクたちはそろそろ国へ戻ろうか~・・・みんなも心配しているだろうからね~。

君が無事で、本当によかった・・・安心したよ~。

ただいま、みんな~。この子は無事だったよ。実は、隣国が魔獣に襲われていてね・・・。



ああ、そんなに謝らなくてもいいって。この子は無事に帰ってきたんだからさ~。

ボクは大したことはしていないよ。ただ、友達を助けたかっただけなんだ~。

えへへ。友達と手を繋ぐと、こんなにあったかいんだね。

これからも、君とずっと仲良くできたら嬉しいなぁ~!



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