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運命の預言者フェルナール

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6/30~7/13


悲劇の預言者クレロードの台詞の中の国家については、こちらを参考にして下さい。→リーリヤⅤ世


運命の預言者フェルナール

今日も雨なのですね。夏の雨・・・。ヒマワリはすでに花開く準備をしていますのに。

でもこの雨もいつかは止む。運命と呼ぶまでもない自然の摂理・・・。

あら?あの方・・・とても物憂げな顔。本を読んでいてもつまらなそう。

なぜあんな顔をなさっているのかしら?重苦しいため息まで・・・。

声をかけてみましょう。きっと私の言葉を必要としているはずですわ。



私の見える運命、それはあの方にとって必要なものに違いありません。

あの、もし・・・聴こえますか?私の声。重なっている本を見てください。

ええ、ここです。挟んであるタロットカード。取り出してみせてはくれませんか?

・・・ふふっ、驚かれたかしら?タロットカードから人が出てくるなんて。

申し遅れました。私は予言者・フェルナール。



よろしければ、あなたのお話を聞かせてはくれませんか?

なぜそんなにお顔を曇らせているのかしら?あなたには似つかわしくありませんよ。

雨だから気分が沈んでいるというわけではなさそうですね。理由をお話してくださいな。

私があなたに話しかけたのも運命。話すことで楽になることもありますもの。

あら・・・お友達がお引越し?それは寂しい思いをされたのですね。



それだけではありませんの?片思いをしていて辛い。毎日胸が痛い・・・・まあ。

想い人に振り向いてもらえない苦しさ、悲しさ、もどかしら・・・。わかります。

私にも覚えがありますわ。といっても、もう何十年も前のことですけれど。ふふっ。

離れてしまった友達のことや想い人のことで気が滅入って、家に閉じこもっていたのですね。

お話してくださって、ありがとうございます。だけど心配なさらないで。



私があなたに素晴らしい運命を告げましょう。きっとあなたの人生の指針になるはずですわ。

さ、このカードを手に取り、念じてみてください。ええ、そう。胸に当てて。

・・・ありがとうございます。ではこうして混ぜて、並べて・・・。

1枚引きます。これがあなたのカード。運命のカードですわ。

裏返してあなたの運命を見てみましょう。ええと、このカードは・・・『運命の輪』。



タロットカードには意味がありますの。このカードの意味は、『チャンス』、『幸運』。そして・・・『変化』。

暗い顔はおよしになって。あなたは今、変化すべきときにいるのです。

今までの不運を嘆くのは終わりにしましょう。さあ、笑って?まずは表情に変化を。

それと・・・ここからちょうど外が見えますわね。窓を開けてみましょうか。

ほら、雨が降っていたはずなのに、もう止んでいるでしょう?気持ちがいいくらい晴れた空。



柔らかな風が黒い雲を流し、太陽が顔をのぞかせて。先ほどの暗闇とは大違い。

この空と一緒。止まない雨はないと言います。空は変化するもの。人間も同じ。

あなたの心にもきっと新たな風が吹くでしょう。気持ちのよい、太陽の香りがする風が。だから・・・

今こそ家から出るときです。それがあなたの運命。『変化』の一歩ですよ。

あなたはすでに幸運の鍵を持っている。だけどその鍵で扉を開けないと意味がないのです。



あなたは変わることができる。今、外に出て自分の目で世界を見つめなさい。

本当の幸せは、恐れず手を伸ばさないと手に入らないのです。あなたも手を伸ばして見てください。

怖いことが何もないというと嘘になります。生きていると、幸せなときも不幸なときもある。ですが・・・。

その恐怖を乗り越えて道を開拓していくことこそが、人生なのですよ。

大丈夫。扉の向こうには幸運が待っていますわ。私が予言しましょう。



まあ、私の予言で勇気づけられた?それは予言者冥利に尽きる言葉ですわね。

行ってください。きっとあなたを待っている人がいます。応援していますわ。

・・・あの方はきっと平気。自分の変化に気がついているはず。私の言葉を受け取ってくれたのが何よりの証拠。

暗い気持ちで閉じこもるよりも、扉を開くだけで新たな道が広がる・・・。

ふふっ、さっそく待ち人に出会えたようですわね。私にはよく視える・・・。



よかった。あの方の微笑み・・・自分の想いを受け入れてもらえてようですわね。

足元には四葉のクローバーが・・・。外に出なかったらきっと、気づくことは永遠になかったでしょう。

こうして変化を受け入れ、新しい幸せを探し続ける・・・。人間というのは、永遠の旅人なのかもしれませんね。

さあ、私も準備をしましょうか。あの方に会えたのも運命。でも・・・。

私の予言を必要としている方はきっと他にもいますわ。だから・・・今こそ旅立ちましょう。



二人の幸せが、さらによいほうへと変化していきますように。

あの方に運命の女神のご加護がありますように―。



惑わしの預言者ミーシャ

あーあ、せっかくの骨董市なのに、わたしはずっとカードの中・・・。

しかも売れない本に挟まれているなんて、最悪だわ。つまらない、つまらない~っ!

せめてここから他人の運命でも眺めていようかしら。つまらないことには変わりないけど。

う~ん・・・あの人の運命は『平穏無事な余生』、あっちの人は逆に『転落人生』・・・。

そしてここで店番しているおじさんは、『人生の伴侶よりも本を選ぶ』・・・はぁ、面白くない。



やっぱり人間にも運命にも興味が持てないわ~。どうせ何も変わりはしないもの。

運命は決まっているもの、変えようと思っても、結果は一緒なんだから。

わたしが唯一できるのは、運命を見て予言することなのに、職務放棄してもう何年になるかしらね?

ん?あそこにいる子・・・。嘘、運命が・・・あんな人間、初めてかも・・・!

久々に興味が持てる人間に出会えた!あの子の運命、最高だわ!



ふふふっ、わたしがあの子に運命を予言したら、どんな顔をするのかしら?

ともかく声をかえてみよう―ちょっと、あなた!!聴こえる~!?ここよ!!

・・・案外鈍い子ね。ここだってば!!胡散臭いおじさんが古本を売っているところ!

もう、やっと来たわね。この分厚い本に挟まれてる『運命の輪』のカード!取り出してみて?

わたしはこのカードから、骨董市に来ていた人の運命・・・未来を眺めていたの。



あなた、ずいぶん面白い運命を背負っているのね。今までにないくらい最高にユニークな運命!

あまりにも面白かったから、つい声をかけちゃった。興味本位ってやつ?

なによ。運命なんてわかりっこないですって?・・・いいわ、それならわたしが予言してあげる。

あなたはこのあと、わたしのカードを手に入れるわ。しかもタダでね。

あっ、おじさんが近づいてきた。・・・『気に入ったのならそのカードをやる。売り物ではないからな』ですって。



ほーら、やっぱりね!わたしの予言は大当たり。あなたはカードを手にれてた。

わたしの『見た』通りの結果ね。さて、カードの外に出てみることにしようかな。

はぁ、やっと自由になった。・・・あ、自己紹介してなかったかしら?ごめんなさい。

わたしは『大予言者』のミーシャよ。・・・なによ、その顔!信用してないわね?

わたしは数々の人間の運命を予言してきたの。しかも百発百中!運命はわたしの手の中なんだから。



ようやくわたしに興味を持ったみたいね?占ってみてもらいたいの?あのね、これは占いじゃないの。

『占い』じゃなくて『予言』だから。そこは間違えないでよね?わかった!?

・・・ごほん。それではあなたの運命を見てあげましょう・・・まずはこのあとすぐに起こる出来事を・・・。

ズパリ、あなたは馬が運ぶ『白い海』で溺れるでしょう!・・・え?『白い海』が何なのかって?

それくらい自分自身で考えなさい!わたしはちゃーんと先の出来事を告げたんだし。



わたしの言葉をうまく解読しない限り、未来はわからないのよ。ふふふっ、面白いでしょ?

この先の出来事を教えてもらっても、意味がなくなっちゃうの。ほ~らほら、せいぜい頭を悩ませなさい!

あら?予言は気にせず家に帰るの?あなたの好きにすればいいわ。ただ・・・無事に帰れるかしらね?

別に試してるわけじゃないわよ。だけどわたしのなぞなぞ、きちんと解いた方がいいと思うけどなぁ~・・・。

あっ、馬車が来た。道の端に寄らないと危ないんじゃない?ま、端に寄っても危険かもしれないけど。



わあ、荷台が大きく揺れて・・・!あなた、大丈夫?・・・ではなさそうね。ふふふっ!

乗っていた牛乳がかかってびちゃびちゃ!でも、これでわかったでしょ?

「何が?」って、なぞなぞの答え!『馬が運ぶ白い海で溺れる』ってやつよ。

『白い海』は牛乳だったってわけ。言ったでしょ?私の予言は百発百中だって。

ただ、私の予言は『意味がわからなければ』どうしようもないものなの。



まともな予言をしてくれって・・・。あのね、さっきのもまともだったでしょ!

ふんだ。言葉の意味を理解できなかったあなたが悪いの。でもね、これだけは言える。

『わたしの予言は絶対』。わからない運命なんてない。だから・・・だからつまらないのよ。

わたしはね、大昔から偉大な予言者として、様々な人に助言をしてきたの。

昔はあなたに出したようななぞなぞではなくて、普通に人々へ人生の助言をしてきた。



だけど、わたしの予言はあまりにも当たりすぎてしまった・・・。人々はわたしを頼りにしすぎたの。

・・・わたしの言葉を聞くために全財産を投げ出した人もいたのよ。信じられないことにね。

わざと運命から目を逸らし、嘘をついたこともある。それでも結局変わらない未来が待っていた。

自分の予言すら運命の一部・・・。この意味、あなたにわかるかしら?

わたしに助けを求めることも、運命だったってことなのよ。それが嫌だった。



まるでわたし自身が運命の歯車みたいでね。見えない何かに操られているんじゃないかって思った。

だからわたしは人間に、運命に興味がなくなってしまった・・・。そのはずだったのにね。

あなたを見つけてびっくりしたわ!今までに見たこともない運命だったんですもの!

・・・え?「予言を聞きたくない」?なんで・・・?あなたはわたしが見たこともない運命の持ち主なのよ!?

「自分の未来がわかっていたらつまらない。どんな運命が分からない方が面白い」・・・。



・・・ふ、ふふっ・・・ふふふっ!やっぱりあなた、最高だわ!!こんな人、初めて!

わからないから面白い。わたしもそのことに早く気づきたかった。そして、そのことをみんなに教えたかった。

勉強させられたわ。予言することだけがすべてじゃない。他にも人々を導くすべはある。

あなた、気に入った!これからもそばにいていいかしら?頼られないのは気楽でいいわ。

イヤっって言ってもついていくから!これもあなたの『運命』ってことで、諦めて?



さ、行きましょう!家に帰るんでしょう?これからわたしもやっかいになるから、ヨロシク!

・・・なんてね。あなたの運命に興味を持ったのは・・・。

少し先の未来以外・・・本当の運命、人生の果てが見えなかったからなんだけどね。



悲劇の預言者クレロード

ほこりだらけで暗い宝物庫・・・。今が昼か夜かもわからない・・・。

ただひとつ確かなことは、わたくしがここにいるのも運命であるということ・・・。

あら・・・珍しく光が・・・。扉が開いたのでしょうか、太陽よりも冷たい光・・・今夜は満月なのですね。

こんな時間に宝物庫へ来る人間がいるとは・・・。いえ、違うみたいですわね。

ここへ閉じ込められた。それが正しいようですわ。大きく扉を叩く音が響いている・・・。



人間とは残酷な生き物・・・。しかしその人間を操るのが運命。宿命・・・。

あの人間にもこの残酷で、愚かな世界の真実を教えて差し上げましょう。

真実を知ることは恐怖でもある。それでも目を背けることはできない・・・。

あの人間はそれを理解することができるはず。今の不運な境遇は、まぎれもない事実ですもの・・・。

声をかけてみましょう。わたくしの言葉に耳を貸すのならば、あの人間もわかるはず。



予言の本質とは何か。そして、運命の先に何があるのか・・・。

そこの貴方・・・。貴方は―本当の運命を知りたくはないですか?

嘘偽りのない、貴方の宿命、これから自分がどういう人生を送るのか、知りたいとは思いませんか?

わたくしはここです。鍵がかけられ、鎖で厳重に縛られた本に挟まれているタロットカード・・・。

・・・ありがとうございます。わたくしは予言者クレロード。すべての運命を告げる者。



わたくしを出してくれたということはやはり貴方も知りたいのですね。自分の運命を。

よいでしょう。わたくしが告げますわ。貴方の定めを・・・。さあ、このタロットカードを引いてください。

そのカードは貴方の運命を教えてくれるものです。自分の未来を知ることができる。

しかし・・・予言を聞いて後悔するかもしれません。素晴らしい明日が待っているとは限りません。

それでも貴方は、勇気をもって自分の運命を見ることができますか?



・・・わかりましたわ。貴方にその覚悟があるのなら、わたくしは何も言いません。

さあ、貴方の手でカードを裏返してみなさい。自分の手で、運命を知るという選択をするのです。

そのカードは『運命の輪』―幸運や好機、変化を表すカード。ですが・・・。

これは逆位置。タロットカードには正位置と逆位置があり、意味が変わるのです。

貴方に示されたカードの意味は・・・『不運』。状況の変化、大切な人との別離・・・。



恋人との別れ、友人の裏切り、事故・・・。貴方はこれから大きな試練を課せられるでしょう。

・・・何故、耳を塞ぐのですか。貴方自身が知ろうとした結果ではありませんか。

予言じゃなくて、ただの不幸な未来予測・・・。嘘でも本当でも聞きたくないとおっしゃるのですか?

貴方は理解しようとしていないだけ。本当の『予言』というものを・・・。

・・・少し昔の話をしましょうか。聞きたくないというなら、それも貴方の選択・・・。



わたくしが勝手に話すだけです。聞かなくても構わない。すべて貴方の自由ですわ。

―わたくしは昔、とある国の予言者として王に仕えておりました。

戦争によって栄え、広大な領土を誇った強国―。

百合の紋章の軍隊が風になびく国・・・。王は、自ら火の神に愛されている人間だと豪語していた―。

わたくしの仕事は国政について意見を述べ、王の判断に助言をすること・・・。



それなのに、わたくしに見えてしまったのは国の滅亡。黄昏の時代を迎えるという真実。

相次ぐ戦いに疲れゆく民、そして国を治める素質を持たない軟弱な跡継ぎの誕生・・・。

・・・この国には暗い未来しか持っていない。そして・・・実際に不幸は起こってしまいました。

一度起きた不幸を止めることはできません。運命とはそういうものです。

王も国が滅びていくのをただ黙って見ておりました。差し出された運命を―ただ受け入れてしまったのです。



不幸な未来を予言したわたくしは、民に恨まれ、魔術師によってカードに封印されました。

だけどそれはわたくしの運命・・・予言者の業、と言えるでしょう。

わたくしは『運命を告げるだけ』ですのに・・・。この言葉の意味も理解されなかったのです。

貴方は知った。自分の不幸な運命を・・・。この運命をただ受け入れるのですか?王と同じように。

違う?その話には続きがある・・・どういうことなのですか?



新たに誕生した王はそれまでのどの王よりも民のことを考えていた・・・。

国を犠牲にしても、戦いに疲れた民を守ったと。

・・・わたくしが閉じ込められている間に、そんなことがあったのですね。

『暗い予言に立ち向かうこと』―貴方はそれが大切だとおっしゃるのね?

起こってしまった事実を変えることができなくても、その先の未来は変えることができる―そうですね・・・。



未来は、自分の意思で変えられる。運命だろうとも、抗ってみなくてはわからない。

不幸な運命の先にあるのは、自分で変えることのできる未来―。

人間は運命の輪の中にいる。同じところをくるくると回るだけ。

その輪に切れ目を入れて、新たな未来を切り開くことができる。それが貴方の勇気。

貴方は貴方の信じる力―勇気で、この運命の輪から抜け出しなさい。



・・・このタロットカードの位置も、正さねばなりませんね。

逆位置ではなく、正位置に、不運の反対は幸運ですもの。・・・貴方にはきっと、幸せが舞い込むでしょう。

・・・ありがとう。真実を知ることができて、わたくしも救われました。

―そろそろ行きましょう。わたくしも運命を切り開くときが来たのですね。

さようなら、勇気ある人間よ・・・。またいつか、出会える日を―。



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