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美しきスパイシモーヌ

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3/30~4/12


美しきスパイシモーヌ

一日が始まる・・・軍人として、国のために今日も立派に働いてみせよう。

イッピー、朝の散歩に行くぞ。

おっと、もうドアの前で待っていたか。お前は頭の良い猟犬だな。

私はしばらく仕事で帰ってこれないかもしれない。また今度の休みの日は一緒に過ごそうな。

おっと、そろそろ出なければ・・・イッピー、いい子で待っているんだよ。



国家特別諜報部員、シモーヌです。失礼いたします。任務があるとお伺いしましたので、参りました。

・・・はい、とある国の要人を排除しろ、ですか。

いえ、問題ありません。任務は必ず完遂いたします。おまかせください。

早速準備を開始しよう・・・支給されたターゲットの資料を読み込まなくては。

今回のターゲットは・・・我が国と国交がある、あの国の大臣か。



あまり評判が良くなく、この者が台頭すれば我が国との国交が途絶え、不利益が生じる可能性がある・・・と。

国のため、全力でターゲットを排除しよう。

用心棒として侵入し、そばでターゲットの様子を窺いながら、機を待つのがいいだろうな。

新しく入った用心棒です。今日からよろしくお願いします!腕には自信があります。

大臣はお忙しいのですね、執務室にはあまり在室されていないようですが・・・。



食事はいつもこの時間なのですね、承知しました。食事中もしっかりとお守りします。

大臣は毎晩遅くまでお仕事ですか・・・本当にお忙しい方ですね。

・・・よし、データがそろってきた。これでターゲットを円滑に排除することが可能になる。

しかし相手は大臣だ・・・用心棒も私だけなく大勢いる。慎重に行動しなければ。

用心棒として優秀であることをアピールし、油断させるのだ。



危ないっ!・・・もう大丈夫です、大臣。銃弾が放たれた位置はわかりました。すぐに処理しますので、ご安心ください。

下手なスパイに中途半端な怪我を負わされたら厄介だからな。警護が厳重になってしまう。

大臣はどうやら相当な数の他国のスパイから命を狙われているらしい。信用させるためとはいえ、守るのもひと苦労だ。

そこにいるのは誰だ!?すぐに出てこい。隠れたままでいるならば・・・撃つ!

ごめんなさい!撃たないで・・・!あやしい者じゃないです!



・・・見かけない顔だ。あやしい者ではないと言ったが、どう考えてもあやしい。

違うんです!旅をしていたら、この国の人たちにこれを持っていって欲しいと頼まれて・・・。

見せてみろ。これは・・・直訴状だな。新しい国策を取り下げろ、と書いてあるが。

新しい国策は国民にとっても不利な改変らしくて、みんなとても悲しんでいました。

ふっ、お人好しだな・・・お前。直訴状を持ってきた者がどうなるかなど、わかりきっているだろうに。



それでも・・・放っておけなかったということか。

ああ、大臣!この者は・・・なんでもありません!旅の者で、道に迷ったようで・・・。

ええと・・・これは・・・はい、直訴状です。国民が旅の者に託したとのことです。

待ってください!取り押さえる必要はないのでは・・・?

いえ、申し訳ございません。仰る通りにいたします。



地下牢に連れていけ、ですか・・・はい、特に異論はございません。すぐに連れて行きます。

・・・おい、隙を見て逃げるぞ。お前はただ巻き込まれただけのようだからな。

命令があればどんなターゲットでも排除するが、お前は私のターゲットではない。

さぁ、ここまで来れば問題ないだろう。

早くこの国を離れるんだ。追手が来るかもしれない。



・・・ん?今、何か音が・・・お前の腹の音か?

ふっ・・・緊張感のないやつめ。携帯食だから味の保証はしないが、これでよければやろう。

ありがとうございます。でも、どうして助けてくれるんですか?

ふっ、さっきも言っただろ。私はターゲットだけを排除する。

直訴状についてだが・・・もうすぐ国民たちの憂いはなくなるだろう。



なぜかって?ふふっ、今はまだ言えないな。じきにわかるさ。

さぁ、無駄話はそろそろ仕舞いだ。

絶対に振り返らず、全速力で逃げろ!国の門が見えなくなるまで・・・!

・・・よし、行ったな。よかった、罪のない命が奪われることがなくて。

さて、そろそろ私も仕事をしなければ・・・。

ああ、早く帰ってイッピーと一緒に散歩がしたいな。



哀しきスパイシモーヌ

うっ・・・ここ、は・・・どこだ・・・ベットの・・・上・・・?

確か、とある国の大臣を排除する指令を得て、私は任務をまっとうしたはず・・・。

痛っ!・・・負傷しているようだ。ああ・・・段々・・・思い出してきたぞ。

任務を遂行した直後に見つかり、逃げる最中で負傷したんだ。

意識まで失ってしまうとは・・・一生の不覚。スパイ失格だな・・・。



それにしても、ここは一体どこだ?普通の民家のようだが。

傷の手当てもしてあるし、誰かが行き倒れた私を助けてくれたのかもしれない。

そこにいるのは、誰だ・・・?

ああ、君が私を助けてくれたのか。手間をかけさせてすまなかった。ありがとう、助かったよ。

おや?そちらにいるのは・・・毛糸を買いに来たお客さん?○○○(プレイヤーの名前が入る)というのか、どうも。



君は毛糸を作って生活しているのか。まだ若いのに、よくできた娘さんだな。へぇ、君の作る毛糸は国一番なのか。

ところで、君・・・もしかして、目が見えていないのか?

ふむ・・・生まれつきなのか。私を助けたときは、○○○(プレイヤーの名前が入る)に手伝ってもらったんだな。

え?腹は空いてるのかだって?いいのか?ただでさえ怪我の手当てで世話になっているのに・・・。

ありがとう、ではご相伴にあずかることにしよう。



・・・さて。彼女がいない間に、もう少しだけ・・・○○○(プレイヤーの名前が入る)、君から事情を聞いてもいいかな?

○○○(プレイヤーの名前が入る)、君は旅人で、彼女の作る毛糸を買い付けるために、この国に来ていたのだな。

それで運悪く、国民たちと大臣の起こしたイザコザに巻き込まれてしまった・・・と。

逃げ出したあと、当初の目的だった毛糸を買いにあの少女の家を訪れたら、この家のすぐそばで、私が倒れていたんだな。

ありがとう、○○○(プレイヤーの名前が入る)。事情は大体把握できた。



○○○(プレイヤーの名前が入る)、迷惑をかけてしまって申し訳ないが・・・まだ負傷が完全に治療するまでには時間がかかりそうだ。

幸いにも、あの少女は目が見えない。私が軍人であることにも気づいていない様子だ。

余計なイザコザに巻き込むこともないだろう。完治するまではここで世話になることになるな。

ああ・・・ありがとう、持ってきてくれたんだね。スープか!美味しそうだ。いただきます。

ひとつ頼みがあるのだが。怪我が治るまで、ここに置いてもらえないだろうか?



最初からそのつもりだったのか?君は本当に優しいのだな。この御礼は必ずさせてもらうよ。

うーん・・・そろそろ怪我も治ってきたな・・・ああ、○○○(プレイヤーの名前が入る)!何か手伝うことはないかな。

薪割りか。いいだろう、力には自信があるんだ。

○○○(プレイヤーの名前が入る)には私の怪我が治るまで、看病の手伝いをさせてしまっているからな。この程度、お安い御用さ。

そろそろ昼食の時間か・・・あの娘の作ったスープは本当に絶品だからな。今日も楽しみだ。○○○(プレイヤーの名前が入る)もそう思うだろう?



少しでも早く怪我を治して、国に帰らなければいけないのに・・・なんだか帰り難いな。

ああ、ちょうどいいところに、もう怪我はほとんど治ったので、そろそろお暇させてもらおうかと思うんだ。

おや?なんだかやけに楽しそうだが・・・何かあったのか?

そうか、明日は君の兄さんの誕生日なのか。

忙しい仕事をしているから、年に一度だけお祝いをするためにここへ訪ねてくれるのが楽しみなんだな。



それは・・・?兄さんが描かれた絵画か。見せてくれるのか?ありがとう。

っ・・・!この、男は・・・大臣・・・?そうか、君の兄さんは・・・この国の・・・。

いや、なんでもないよ。素敵な絵画だ。

そうだ、もうすっかり怪我は治ったから、私は明日の早朝に出ようと思う。

本当にお世話になった。必ずお礼をさせてもらうよ。



そうだ、土産に毛糸を買わせてくれないか?

ありがとう。戻ったらこの毛糸で何か編もうと思う。

・・・おはよう、いい朝だね。よく眠れたかな?

ふふっ、楽しみすぎてあまり眠れなかった?年に一度の楽しみだものね。

鍋の中身はなんだい?へぇ、芽キャベツのシチューか。兄さんの好物なんだね。



あっ・・・すまない、どうしたのだろう。煙が目に入ったのかもしれない。涙が勝手に出てくるなんて・・・。

心配しなくていいよ、○○○(プレイヤーの名前が入る)。なんでもないんだ。

じゃあ、そろそろ私は出るよ。早くしないと暗くなってしまうからね。

それじゃあ、お元気で。良い日になるように祈っておくよ。

ははっ・・・空が抜けるような青だ・・・綺麗な色だな・・・。



伝説のスパイシモーヌ

周囲の者たちは、私のことを『伝説のスパイ』などと呼んでいるらしいが・・・分不相応な呼び名だな。

凄腕と言われているせいか、指令が次から次へと来るので、休む暇もない。今度はどんな依頼が来るのか。

今回の指令は、戦争を仕掛けてくる可能性が高いと噂になっている敵国へ潜入することらしいが。

最近名を馳せ始めた、軍最強の狙撃手を排除するそうだが・・・ふむ、これがその狙撃手を描いた絵か。

鋭い目をしているな・・・もし我が国と戦争になった場合、この者がかなりの難敵になると言われている・・・か。



我が国の脅威となる可能性が少しでもあるのならば、芽を摘んでおくべきだろう。

まずは視察をするために、ただの旅行者に扮し街を歩こう。

ふむ・・・この国は露店が栄えているんだな。どの店も興味深い・・・。

あっ。す、すまない!よそ見をしていてぶつかってしまった!

いえ、こちらも少しボーッとしていたので、大丈夫です。



それ・・・もしかして、今私とぶつかったときに落ちて割れたのか?

ガラス細工の小物・・・露店で買ったのか?本当に申し訳ない。弁償させて欲しい!

大丈夫です。こちらの不注意もありましたから。

いや、そういうわけにはいかない。弁償させてくれないと、私の気が収まらない。

でも・・・。



ああ、ちょうど小物を売っていた露店の店主が私たちを見ていたらしい。格安で修繕を受け付けてくれるそうだ。

わかりました、ではお言葉に甘えさせてもらいます。

私も安心したよ・・・それで、よかったら、修繕をしている間、一緒に露店を見て回らないか?

よろこんで!

よし、決まりだな。ではあちらの端から順番に見ていこうか。本当に色々な店があるんだな・・・これは手品の道具か?へぇ・・・



それで、そちらの品は一体何に使うんだ?ほう、そういう使い方か・・・興味深いな。

す、すまない・・・普段は仕事で忙しいので、ゆっくり買い物をすることもないんだ。

この髪飾り、可愛いな。えっ?買ったらどうかって?私に似合うだろうか・・・?

よかったらプレゼントしますよ。

迷惑をかけたのは私なのに、買ってもらうだなんてできない。



せっかく仲良くなれたので、ぜひプレゼントさせてください。

そこまで言うのならば。ありがとう、大切にする。

ああ、そろそろ修繕が終わっている頃だな。

よかった!綺麗に直っているな・・・本当によかった。

では、私はそろそろ行かなくては。今日は楽しかったよ。ありがとう、またいつか会おう!



・・・さて、遊びの時間は終わりにしようか。任務を遂行しなければ。

ここが軍の宿舎か。見張り番以外は寝静まっている。だが・・・この催眠銃で・・・よし、命中したぞ。

あそこでぐっすりと寝ているのがターゲットだな。このサイレント銃で・・・狙いを定めて・・・。

おかしいな・・・寝息が聞こえない?っ・・・!?なんだと!ベットがもぬけの殻だ!

っ!?誰だ!今、私を撃ったのは・・・!



ふふ、あと少し反応が遅れていたら、頬のかすり傷では済まなかったな。

お、お前は・・・昼間、ガラス細工を持っていた・・・!

まさか、ターゲットがお前だったとはな。

事前に顔を描いた絵は見せられていたが・・・あれは戦闘中を描いたものだったのか。露店で会ったときの柔らかな表情とは大違いだった。

借りはあるが・・・任務となれば話は別!容赦はしないぞ!食らえっ!



よし、腕に命中した!・・・チッ、防具に当たったか。

ふふ、怪我はなかったようだが、腕が痺れてはもう銃は撃てまい?

我が国の脅威となる存在は排除せねばならない。さらばだ。

チッ・・・いつの間にか起き出してきた軍人たちが援護を・・・くそっ。

何?こいつは軍人じゃない、だと?ただの旅人で・・・協力はしたが軍に入隊はしていない・・・?



明日、この国を出立する予定でした。なのであなたの国の脅威にはなりえないかと思います。

・・・そうか、そうだったのか。

○○○(プレイヤーの名前が入る)、少しの間だったけれど楽しかったよ。ありがとう。

シモーヌさん!

夜行馬車に間に合ってよかった・・・このまま国へ戻って、すべてを報告しよう。きっと国王様はわかってくださるだろう。



○○○(プレイヤーの名前が入る)と過ごした少しの間だけは、伝説のスパイではなく・・・ただのシモーヌでいられた気がする・・・。

また会える日が来るだろうか。



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