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深海の踊り子メディサ

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7/31~8/15


月夜の踊り子メディサ

おはよう、今日も海の中はとっても綺麗ね!良い日になりそうなの!

生まれてからずっと海の中に住んでいるから、外の世界を知らなくて・・・。

いつか色んな景色を見てみたいね。シェリーも海月族の村以外の世界を見てみたいでしょ?

海月族のみんなは『外の世界は危険だ』って言うの。

お父さんとお母さんも、私が外の世界に興味があるって言うと、不安そうな顔をするの。



でも私・・・いつか村を出ようって思って、こっそり準備をしているの。みんなには内緒なの!

今まで何回も友達のあなたと一緒に挑戦してるけど・・・。

いつも村の外の海流の手前で、怖くなって帰ってきちゃうの。

あと少しの勇気があれば・・・きっと近いうちに出られると思うの。

そういえば・・・もう明日が満月の夜なの。



クラゲの精霊である海月族は、満月の夜にお祭りを開くの。そこで私たち踊り子たちは伝統の舞を踊るの。

私も踊り子として、満月祭でいつも踊っているの。あなたも?知ってるよね

一族に代々伝わる聖槍を持って舞う踊り子の姿は、みんなが見惚れるほど綺麗なの。

聖槍を持って舞うと、神聖な気持ちになって、いつもより上手に舞える気がするの。

えっ?舞ってみせて欲しい?・・・ここでだとちょっと恥ずかしいから、お祭りの夜に見て欲しいの。



祭りの日に踊り子は綺麗な衣装を着るの。海月族だけが着ることを許されているの。

ひらひらしたレースが体を動かす度に揺らいで、とっても綺麗なの。

小さな村の中に居続けるのはつまらないけど、満月祭や踊りは大好きなの。

物心ついた頃からずっと踊り子として育てられできたから、舞は体に染み付いているの。

私の舞を見てみんなが楽しい気持ちになってくれたら嬉しいの。



海月族のみんなは毎回満月祭をとても楽しみにしているの。

だから私もみんなに応えたくて、一生懸命に踊るの。

あ、もうこんな時間・・・そろそろ練習に行くの。じゃあ、またね・・・!

小さな頃から何度も踊ってきた舞だけど、いつも練習は欠かさないの。

手をこうやってひらひらさせると、祭りの衣装が揺れて綺麗に見えるの。



あれ・・・いつの間にこんなに経ってたんだろう。

練習に集中していたら、随分遅くなっちゃった。

こんな遅い時間まで練習していたのは初めてなの。

急いで帰らないと、お父さんとお母さんが心配するの。

きゃっ!?この海流は何!?体がどんどん流されていくの・・・!



きゃあっ!何も見えない・・・誰か!助けて・・・!

周りには強い水の流れでできた泡がいっぱいで、ここがどこかもわからないの・・・。

でも、こんなに長い時間流されたら、村からはかなり離れてしまっていると思うの。

どうしよう・・・このままじゃ、二度と村に戻れないかもしれないの。

・・・あれっ?いつの間にか、流れが緩やかになってきたの・・・。



ここは・・・どこ?

あっ、大きなお月様が水面に揺れているの。

もしかして、ここは海と空の間なの?

丸いお月様・・・ゆらゆら揺れてとっても綺麗なの・・・。

手を伸ばせばすぐに外の世界なの・・・でも。少し怖いの。



またここで戻ってしまったら、いつもと同じになってしまうの。

ほんの少しだけ、勇気を出すの・・・!

えいっ・・・ああ、これが外の世界・・・。

月がすぐ目の前にある・・・手で掴めそうなくらい近い!

これが水面越しじゃない、本物のお月様なの・・・。



ああ、肌に何かが当たっているの・・・あら、あなたは誰?

キシさんとおっしゃるの?はじめまして、私はクラゲの精霊、海月族のメディサなの。

この肌に当たる冷たいものは『風』って言うの?

教えてくれてありがとう。私、海の世界から出たことないから、何も知らないの。

ねぇ、外の世界は一体どんな場所なの?



まだ怖くて、すぐにでも戻ってしまいたい気持ちも実はあるの・・・。

でも、もっと広い世界をこの目で見てみたいの。

大きすぎる夢だって、みんなは笑うかもしれないけど・・・。

えっ?そんなことはないって?素敵な夢だねって?・・・ありがとうなの。

あなたのおかげで、勇気が湧いてきたの。



初めて外の世界を見たこの感動を忘れないようにしなきゃなの。

もっともっと色んな世界を見て回りたいの!



水槽の舞い姫メディサ

んっ・・・おはよう・・・あれ、なんだかいつもと水のにおいが違うの・・・?

あれ?ここはどこなの!?なんだか息苦しいの・・・!

私・・・海にいたはずなのに・・・ここは海の底よりもだいぶ明るいの。

いたたっ!固くて透明な壁・・・!?ここは狭いの・・・やっぱり海じゃないの・・・。

きゃっ!?透明な壁の向こうから、何か大きな生き物がこっちを見ているの。



初めて見る生き物なの・・・海月族じゃないみたいなの・・・。

海流に乗って、海と空の境目まで行ったことは覚えてるの。でもその後の記憶がないの・・・。

あら、こんにちは、はじめまして。キシさんとおっしゃるの?私の話を聞いてくれる?私、今とても困ってるの。

ええと・・・そうだ!あの日、何度目かの海と空の境目へ向かったとき、突然体が大きく揺れたの。

そうしたら、透明な箱に入れられて、長い間ガタゴト揺らされて・・・そのうちに、眠たくなっちゃったの。



それで気がついたら、この場所にいたの・・・ここはなんだか狭くて息苦しくて・・・早く出たいの。

どこに行くの!?・・・えっ?辺りを調べて来てくれるの?気をつけて!・・・なの。

はぁ、ひとりだと心細いの・・・あら、あなたは誰?イソギンチャクさんなの。こんにちは!

ここは海じゃないみたいなの。ここがどんな場所か知ってるの?

水族館・・・ここは水族館っていうの?



海はどこまでいっても端がないけど、水族館には端があるの?

ここは外から『隔離』されている『水槽』の中なの・・・。

外を通っている大きな生き物は『人間』って言うの?確か、昔話で聞いたことがあるの。

ありがとう、イソギンチャクさん。この場所がどんな所なのか、少しでも知れてよかったの。

あれ?この子、さっきからずっと私のこと見てるの・・・。



不思議な気持ちなの。昔話で聞いた『人間』が本当にいるだなんて。

でも、なんだかじっと見つめられていると、落ち着かないの。見世物になったみたいで・・・。

確かに村から出たいとは思っていたけど、こんなことになるなんて・・・なんだか悲しくなってきたの。

どうしたらいいの?・・・ああ、イソギンチャクさん、心配させてごめんなさいなの。

お父さん、お母さん・・・今頃私がいないことに気づいて、心配しているの・・・?



ああ、こんにちは!お魚さん。ごめんなさいなの。ちょっと気分が落ち込んでいたの。

『外に出たいなら、係の人が水槽の掃除をするときがいい』って・・・本当なの?

『係の人が持っているバケツに入れば外に出られるかもしれない』・・・でも、誰もそれを確認したことはないの?

もし失敗したら・・・水のない世界に投げ出されて、死んでしまうかもしれないの。

でも、何もしなかったら、一生この水槽の中で暮らすことになるの。



広い世界を見ないまま死んでいくのは嫌なの。

勇気を出して、私・・・やってみるの!

ありがとう、あなたも協力してくれるの?私、海の世界に戻れるよう、がんばるの。

よし、そろそろ水槽の掃除の時間なの・・・。

係の人が来たの。そーっと近づいて・・・係の人がよそ見をしている隙に・・・今なのっ!



きゃっ・・・!?よかった。無事にバケツの中へ入れたの!

ありがとう、みんな・・・!必ず海へ帰ってみせるの!

親切なみんなのおかげで、作戦を成功させることができたの。

海へ帰っても、みんなのことは忘れてないの。

ああ、狭い所からようやく海に戻れるの!



お空が見えるの。ここまで来たらきっともう大丈夫なの。

きゃあっ!?どうなっているの!急にぐるっと一回転したの!

バケツの水と一緒に暗い場所に捨てられちゃったの・・・ここはどこなの?

くんくん・・・海水のにおいが向こうから微かにするの。

この暗い場所を抜けたら、もしかしたら海へ戻れるかもしれないの!



えいっ、えいっ・・・!進めば進むほど、海のにおいが濃くなるの!間違いないの!

わっ!?柵があって、これ以上先へ進めないて・・・。

海はもう目の前にあるはずなのに・・・うっ、息が苦しくなってきたの・・・。

あっ、あなたは・・・キシさん!ここを開ける方法を調べてきてくれたの?

ひゃっ・・・久しぶりの海の水なの。安心するの!



キシさんやみんなのおかげでこうして海に帰ることができたの。ありがとう!

お父さん!お母さん!メディサが無事に戻ってきたの!

外の世界は確かにお父さんたちが言うように危険がいっぱいだったの・・・。

でも、怖いばかりじゃなかったの。

とっても優しい生き物たちともたくさん出会ったの。



そのおかげで私は海に戻ってこられたの。

またいつか、外の世界を見てみたいの。

今度はもっと色々な場所を、自分の力で巡ってみたいの!

怖いという気持ちはまだあるけど、でも楽しかったの。

水族館のみんなにもまた会いたいの。

きっとこの夢を叶えてみせるの!



深海の踊り子メディサ

おはよう!今日から儀式の舞の練習が始まるの。ジェニーは他の村から来たの?お互いがんばろうね・・・なの!

4年に一度、深海世界で行われる大きな儀式・・・そこで舞う踊り子に選ばれて、本当に嬉しいの。

各村々から舞の上手い踊り子を集めて、海神様に踊りを奉納するから、選ばれるのはとても光栄なことなの!

踊り子たちの代表として、私は群舞だけじゃなくソロの踊りも任されているの。

代表に選ばれるのも初めてなのに、1番目立つソロの舞もだなんて、つっても緊張するの・・・!



でも・・・この日のために、毎日一生懸命練習してきたの。その成果を見せるの!

ああ、成功しますように・・・あっ、もう始まるの。あなたも一緒にがんばるの。

ひらひら・・・ふわふわ・・・この舞でみんなが楽しんでくれたら嬉しいの!

あれ?手のひらに何か落ちてきたの・・・貝殻のペンダント?

あっ、まだ舞の途中だったの!ひらひら・・・ふわふわ・・・みんな、私の舞を楽しんで・・・なの!



みんなありがとう!たくさん楽しんでくれて、拍手してくれて・・・儀式は大成功なの!

そういえば・・・この貝殻のペンダント、誰かの落とし物なの?

持っていたら落とし主が現れるかもしれないの。それまで私が身につけておくの。

ふぁっ・・・儀式が終わって安心したら、最近ずっと眠くって・・・。

儀式といえば、この間の私の舞、とっても評判だったらしいの。



『深海の暗闇で光を放ちながら楽しく踊る舞姫』・・・なぁんて噂されているらしいの。

なんだか大袈裟な噂になっているみたいで、ちょっと恥ずかしいの。

噂を聞いたらしい遠くの海の王族から、求婚の手紙まで届いたの。

王族から求婚だなんて、びっくりしちゃったの。でも、顔も見たことがない・・・知らない方とは結婚したくないの。



だからお断りしたの。悪いことしちゃったの・・・どうしたらよかったの・・・?

海月族のみんなは『もったいない』だとか『王族の方からの求婚を断るなんて失礼だ』って言うの。

でも私、自分の結婚相手は自分でちゃんと選びたいの。

そうだ・・・このペンダントの持ち主、騎士さんなら知っているかもしれないの。浅瀬まで行けば騎士さんとお話できるの。



こんにちは、騎士さん!このペンダントの持ち主、知らないの?

知っているの!?一体、どんな方なの・・・?

えっ、ここに来ているの?騎士さんのお友達なの・・・?

あっ・・・こんにちは。初めまして、私は海月族の踊り子、メディサなの。

あなたは・・・旅人さん?遠くの海からやって来たの?汚れた服を着てるけど、なんだか心惹かれる雰囲気があるの。



え?ここで舞ってみせて欲しい?・・・うん、わかったの。

彼、私の舞をとても真剣な目で見つめているの。でも・・・凄く楽しそうなの。

彼の手拍子に乗って踊ると、いつもより軽やかにステップが踏める気がするの!

そうだ、このペンダントを返すの。

儀式の舞の最中に、突然手のひらに落ちてきたの。



持ち主が見つかって本当によかったの。

え?私にプレゼント?いいの・・・?

どうしよう騎士さん、これ・・・もらっていいのかな・・・?

『大切にしたい相手を見つけたときに渡すものなんだ』って、私が・・・大切にしたい相手?

もしかしてあなた・・・私に結婚を申し込んできた、遠くの海の王族・・・?



儀式の日に、王族の鑑賞席からこのペンダントを投げ込んだの?

どうして、そんなこと・・・?

私の舞があまりにも美しかったから、一目惚れした・・・?

は、恥ずかしいの・・・褒めすぎなの。騎士さん、拍手は恥ずかしいの・・・。

でも、私のために家族や周りのみんなの反対を押し切って、こうして遥々来てくれたの。



私のこと、こんなに好きだと言ってくれたのは、あなたが初めてなの。

・・・じゃあ、お友達から・・・お願いします、なの。

きゃっ!?えっ、今から踊るの?2人一緒に!?

騎士さんもとっても楽しそうに手拍子してくれているの。お祝いしてくれているの?

あははっ、本当に突然なの。でも・・・なんだかとっても楽しいの。

彼となら・・・これからも幸せに過ごしていける気がするの!



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